誰も信用しない利己主義者の日常④【超ショートショートまとめ】
「庶民を出し抜いて金持ちになってやる」
この比嘉冷射士の志は早くも頓挫した。
原因は世界屈指の金持ち達が軒並み、人間の生活に必要不可欠な商品を扱う会社の経営者、またそれに協力した投資家である事実だった。
(善行をしないと金持ちになれないのか?)
比嘉冷射士は眩暈を覚えた。
〈比嘉冷射士のプロフィール〉
参考:
比嘉冷射士は人に傷付けられてから人を傷付けるようになった。
その最大の動機は、自分が受けた理不尽を他者にも味わわせたときの、不平等が解消される快感だった。
一方で悪事を働く度に胸が痛んだ。
現在、比嘉冷射士は自らをソシオパスだと思い込むことで良心の呵責に蓋をしている。
「ソシオパスだと偽って罪悪感を掻き消そうとする者」
雲の上に住む天使の1人が、何者かに羽を射抜かれて地面に落ちた。
「俺は狩人だ」
地上にいた弓を射た者はそう呟いた。
天使は(なぜ自分だけ)と怒り、天に向かって矢を放った。
すると、ある天使が射落とされ目の前で悶え苦しんだ。
その痛ましい姿に耐えられず、天使は呟いた。
「俺は狩人だ」
参考:
レイプのトラウマによって、比嘉冷射士はセックスとオナニーができなくなった。
この事実は性的な行為への嫌悪に留まらず、人間関係にも影響を及ぼした。
相手を欲求解消の踏み台にするオナニー的な関わり方も、相手と喜びを分かち合うセックス的な関わり方も、今の比嘉冷射士にはできない。
比嘉冷射士は他者との関わり自体を嫌悪している。
もはや他者と関わる動機のある大多数の人々を妬み、同じ地獄とはいえないまでも、同程度の苦痛を味わわせるためだけに他者と関わっている。
「陰キャと陽キャ」
各々のパートナーと抱き合い羽ばたくことで飛ぶ、生まれ付き片翼の種類の蝶達がいる。
今は春。
パートナーを組んだ蝶達が空を埋め尽くし笑い声を上げながら飛んでいる。
まるで色とりどりの花弁の浮く川が上空を流れているようだ。
羽が萎れたり破れたりしている蝶達は地面を見つめながら歩く。
参考:
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
比嘉冷射士はスーパーで泣きながらレジを打っていた店員に声をかけた。
先程まで「お前のせいで列の進みが遅い」と怒鳴られていた店員は、嗚咽交じりに礼を言った。
比嘉冷射士の寛容さは、店員に期待していないことの表れだった。
クレーマーは期待していた。
「人と人の関係」
今まで人生を共に歩いた人は3人です。
1人目とは二人三脚で歩きました。
歩幅の異なる私達はよく足がもつれ、私は無理に相手に合わせ疲れ果てました。
2人目とは各々のペースで歩きましたが、気が付くと相手に置き去りにされていました。
3人目とは適度な距離を取って並んで歩いています。
□実験に関する情報
・2012年から2017年の間に複数回、20代から50代までの男女443名を対象として行われた
・実験には主に「独裁者ゲーム」が用いられた
独裁者ゲームは、被験者が2人1組になり、一方に分け手もう一方に受け手の役回りを与えられ、分け手が与えられた金銭を好きな額だけ受け手に分配できる状況を前提に行われた
被験者は「A:あなたは2,000円を得て、相手は1,000円を得る。B:あなたは1,500円を得て、相手は1,500円を得る」というように、分配の内容について二者択一の質問を何問か答えた
・測定は「協力的か非協力的か」と「回答までの時間が長いか短いか」の指標で行われた
□実験の結果
実験の結果、回答までの時間が短いと非協力的な選択肢を選んでいた人が、時間をかけると協力的な選択肢を選ぶ場合があった。
反対に、回答までの時間が短いと協力的な選択肢を選んでいた人が、時間をかけると非協力的な選択肢を選ぶ場合があった。
この結果になった理由としては回答までの時間によって、利己主義的・利他主義的な被験者の思考が下記のように変わるからと考察されます。
参考:
https://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_12320.htm