ポインツマン

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初等数学ってなんだよ 代数学編

初等数学は「初等」だから簡単? いきなり、大見出しを否定することになるが、初等数学は簡単どころか数学のなかでも最難関と言っても良い。ここで用いる「初等」は初等、中等、上等のランク付けではなく、「根本の」の意味と取った方が良い。  扱うものは演算子(+とか×とか)、多項式($${x^2-5x+6}$$など)、方程式($${x^2 = 0}$$など)、三角関数(sinやcos)や指数関数($${e^x}$$)で――というか、それそのものを数学的に定義して、性質をすべて確定させる。

    • サミュエル・ベケット『名づけえぬもの(The Unnamable)』(from Trilogy)

      第三作『名づけえぬもの(The Unnamable)』 旧訳にあたる安藤元雄訳では「名づけえぬもの」、新訳にあたる宇野邦一訳では「名づけられないもの」の邦訳となっているが、前回(『マロウンは死ぬ』)と同じくこの記事では旧訳の表記を用いる。  ようやく三部作も完結作までこぎつけたわけだが、なるほど、ここに至って最大の難所にぶち当たった――これが、三部作の評論が極端に少ない理由の最たるものですらあるのかもしれない。  『名づけえぬもの』に至り、ついにベケットは時空間の手綱を限界ま

      • サミュエル・ベケット『マロウンは死ぬ(Malone Dies)』(from Trilogy)

        第二作『Malone Dies』(邦訳:マロウンは死ぬ) ベケット三部作の二番目に当たる『マロウンは死ぬ』(サミュエル・ベケットと三部作については別記事、「サミュエル・ベケット『モロイ(Molloy)』(from Trilogy)」参照)について引き続き論評する。旧訳にあたる高橋康也訳では『マロウンは死ぬ』、新訳に当たる宇野邦一訳では『マロウン死す』の邦訳となっているが、この記事では旧訳の表記を用いる。  サミュエル・ベケットは第一作『モロイ』にて、揺れ動く時空間を表現すべく

        • 「勇者であるシリーズ」を振り返る

          前書き 2014年のアニメ『結城友奈は勇者である』から始まった「勇者であるシリーズ」、当初はメディアミックスとしてイラストノベル『鷲尾須美は勇者である』が並行して連載されたが、全体としてどの規模まで広がっていくかは不明瞭だった。  しかし、アニメ「ゆゆゆ」二期決定、アニメの300年前の世界を描くイラストノベル『乃木若葉は勇者である』の連載等が次々と発表され、「勇者であるシリーズ」の世界は爆発的に広がっていった。  そして、スマホ用ゲーム『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき

          サミュエル・ベケット『モロイ(Molloy)』(from Trilogy)

          文学界の極北、サミュエル・ベケット サミュエル・ベケット(1906-1989 愛)の文才が極致に達したのは、『モロイ(Molloy)』『マロウンは死ぬ(Malone Dies)』『名づけえぬもの(The Unnamable)』の三部作が盤石ゆえで、後世もその見方に異論は少ない――ただし、ベケット自身はこの三作をまったく別の作品と見做しており「Trilogy」(三部作)とは考えていなかったようだ――一方で、この三作が根底を共有しており、作品ごとにそのテーマを広げていったことも否

          サミュエル・ベケット『モロイ(Molloy)』(from Trilogy)