『小さき勇者たち〜ガメラ〜』 阿鼻叫喚となにかの芽生え
特撮といえば、これが、我が家が最も記憶に残している問題作です。
ガメラの劇場版最後の作であり、
結論としては、本当にありがたい作品でした。
なんと言っても、一般家庭での、卵の時からのガメラの飼育が見られるという嬉しさ。
私が亀を可愛いと思っており、
怪獣ではガメラが一番好きなので、
お子様コーナーにあったDVDをいそいそと借りてきて、
かわいいベビー亀から、
大きくて賢くて優しいガメラに育っていくのを、
子供と一緒に喜んで見ていました。
しかし、そこへ出てくるのが
あの憎き悪役怪獣エリマキトカゲ。
そこまでやらなくてもいいだろうという苛烈さで、
まだそんなに大きくない、
かわいいガメラを刺す刺す。
攻撃方法もえげつない。
ほとんど泣かないうちの子達が、
この時ばかりは阿鼻叫喚でした。
下の子が「とめてー、ガメラをいじめるなー、もう消してー」と泣き出し、
上の子も「やばい、やばい」と顔つきが変わってきた。
私も、
一応子供向けだから、
展開的に逆転があるだろうし、
ヘタに消してもトラウマかと思って
子供をなだめながらも、
トカゲのあまりのご無体にオロオロとしてしまいました。
そんな中、
横でその阿鼻叫喚にわざわざ寄ってきて、
「わー、子どもって本当に"うわ~ん"って言うんだーー。
こんなん大丈夫に決まってるのにバカだねー」、
と、嬉しそうに爆笑しているお父さん!本当に楽しそう!
画面では人間劇をやっていて、
なかなかガメラが復活しそうにない中、
とりあえずストレスのはけ口として、
「お父さんひどい!人間性を疑う!
このエリマキトカゲ!」
と、上の子と一緒に怒っているうちに
なんとかガメラ復活に向け、話が動き出しました。
しかし、人間に強引な強化をされて、
それでもそんなには強くもないのに、
必死で戦わなければいけないガメラの不憫さに、
ガメラの幸せを願う親子は、
野生同士の縄張り争いならともかく、
人間なんかほおって逃げればいいのにと、意見の一致を得つつ、
とにかくガメラ生きて!
できたら怪我少なく!
と、心を一つに、
ものすごい真剣に応援しました。
その後、子どもにとってガメラはアンタッチャブルになり、
残念ながら過去作なども拒否されていますが、
主人にとっては「あのガメラ楽しかったなー」と振り返る、
そういえばなにか子供に対する興味のステージが上がったようにも感じる、
良い感じの出来事になってました。
自分とは違う、
くっきりした感情をもつ人間の面白みみたいなのを、実感したのかもしれません。
子供の前で「うわ~ん」の真似をして
からかうのは止めろと、本気でクギを差しはしましたが、
主人の感じ方が私とは違う事が、
子供に多様性や複雑さを示してて、
いい事のような気もすると、実は評価もしています。
子供にとっては災難だったかもしれませんが、
振り返ると、
親子関係の枝葉を豊かにしてくれた、
ハードな山登りくらいの効果はあったような気もする、
ありがたい作品でもあります。
私も子供と心を一つにしてガメラを応援できた事が嬉しかったので、
今は我慢するけれど、
将来ボケるまで生きられたら、
嫌がられながら、何度も繰り返し話す気がしています。