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「よろしく。」小さな花の物語。


バスで一時間半乗りついで行く
道中はみどりの風。くねくね道。
そこは 山あいの村
梅林と森林とダムしかない
冬の寒さが緩みかけた頃
しろい梅の花が咲いてひそかに 
そしてほんのりと あたりを灯す
町営の温泉がこころとからだを癒やす

産地直売所に並ぶ商品たちは
はにかみながら日に向かって並んでいる

農家のかあさんたちが丁寧に仕込んだものたち
素朴で混ざりけのない田舎の味
昔 母が作った味

そのなかに 山や野原や庭先に咲いている
なつかしい顔をした花たちがいる
ああ
おかあちゃん
老人会でバス旅に行くと買ってきてたね
りんどうやすずらん
大事に育ててた


小さな小花を集めた花ひとつみっけ

あまりに小さい花々の集まりのそれは ささやくように
居る

ねえ
ここにいるの
並んでるの
見て。。

立ち去ろうとして でも また 見たら
ふふと笑ったような。。

山あいの中学校で笑いさんざめいた友のつぶやきみたいで
また 立ち止まる

ねえ
ここにいるの
並んでるの
分かってる?

分かってるよ
来る?
一緒に来る?

うん

そう
じゃあ おいで

レジのおばちゃんに聞いた

この花 日陰に置かなくてはいけませんか?

いいえ
この子は強いから日照りにも負けないわよ

そうなんですか
名まえはなんというのですか?


ペンタスよ


え?

ぺ 、、かたかなの「ぺ」で始まるの。。

ああ
そうなんですか。。

ペンタスの花言葉は「希望がかなう」「願い事」。
ペンタスの花姿が星のように見えることから、ついた。

バスなので 二株買った
バスの中は 冷房がきいているけど
でも
猛暑の中 しおれて辛そうだよ。。ごめんね。。
もう、少し我慢してね。。

大丈夫。大丈夫だから。
笑ってるみたいに 揺れる

終いに 気付くと大きなトートバッグのなかで寝込んでた

長旅の末 やっと我が家の狭い狭い庭へ来た。
ペチュニアたちのそばに置いた

わあ
ここが 新しいおうちなの?
よろしく。。

狭い狭い庭で またそっと咲くこたちがやってきた晩夏の黄昏時のこと。



昔 その人は 赤児を抱いて いつか故郷を拓けと願い

「父を越えて行け」と 名前を さずけた

母は影のように たたずみながら すこやかであれと 涙を流す

のびやかに しなやかに 育てよ 子供

やがて 大地 踏みしめ 太陽になれ

祖母に手をひかれ 海辺を歩く はるか遠い国へ 胸をおどらせ

風がほほを過ぎて 7才の夏の日

姉の唄う声は 小鳥のようで 心ときめいて 足を はやめる

のびやかに しなやかに 育てよ 子供♬


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