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爺さんの一日、一景、一笑 #17 そっくりさん

 そっくりさん その1
我が家には二人しかいない。
たまに、幼稚園児と小学生の孫がくる。いつも飴を舐めている。
 先日の衣替えで使った残りなのか、ショウノウが二個机の隅に置いてあった。
 1×2センチの透明のビニール包の中に、白くて丸いショウノウが一個入っている。
『危ない、危ない。子供が飴と間違えて食べてしまったらどうする!』
直ぐにゴミ箱に捨てた。
 二日後、奥様がここにあった飴を食べたかと聞く。
「飴?飴じゃなくてショウノウが置いてあった。間違って子供が食べたらどうする。気をつけろ!」
「ショウノウ?私は置いてないけど」
ムッときて、捨てたゴミ箱をあさる。
「これ、これよ!」
と、鬼の首でも取ったかのように、先日のビニール包を目の前に見せる。
「それ、飴じゃない?」
「え、飴?ショウノウだろう?」
 よく見ると、包のすみに小さな字でミルク味と書いてある。
『なんと紛らわしい、そっくりじゃない。飴だったのか!』
 ふと、気づき、急いでタンスが置いてある部屋に行き、引出しを開けた。
引出しの隅には、見覚えのある包がポツンと一個転がっていた。
捨てるのはもったいないと、一個を引出しに入れていた。
直ぐに取り出し、封を切って口の中に入れた。
 確かに甘い。
 リビングに戻ると奥様が、
「まさか、タンスの中に入れてはないだろうね!虫が逃げるどころか、寄ってくるよ!」
黙って、口の中を開いた。
「大丈夫です。ちゃんと回収しました!」

 そっくりさん その2
お尻の痔の調子が時たま良くないので、黄色のラベルでチューブになっているボラギノールを、洗面台の引出しに常備している。
 ある日、洗面台の横に置いてある置物が、落っこちて壊れた。お気に入りだった。
 黄色のラベルのセメダインを持ってきて、割れた部分につけてくっつけた。
 直ぐにくっついた。本当に良くつくわ!
何気なしに、そのまま洗面台の引出しに入れた。
 二週間後、痔の調子が悪くなったので、引出しを開くと黄色のチューブが二個あった。
因みに、お風呂上がりなので、メガネをかけていない。
『あれ、もう一個買ったっけ?』
不思議に思いながらも、一個をつかみ、チューブから中身を出してお尻に付けようとした瞬間、
思い出した!
 掴んだチューブは、ボラギノールではなく、セメダインの方だった。
「あ、あぶなあ、そっくりじゃん!」
考えただけでも、お尻の穴がくっついた気がした。

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