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クリスマスツリー

ジイジのところにはツリーはないの?

物心をついた孫が言った

ツリー?
クリスマスツリーか?
そういえば、いつ頃から飾らなくなったろう

確か屋根裏部屋にあったはず

一番奥の片隅に箱に入ったまま立て掛けてあった

足元にあった『クリスマス用飾り』と書かれた段ボールと一緒に持って降りる

確かこのツリーは三代目だ


遠い昔

父にクリスマスツリーがないと、うちにはサンタクロースが来ないと訴えた
本当は、子供心に煙突さえあれば来ることは信じていたし、ただ家の中にツリーが欲しかっただけだった

ツリーが無くてもサンタはくるよと言いながらも、父は何処からか、背丈ぐらいの一本の杉の木を持って帰ってきた

杉の木を立てるために、風呂を沸かす薪を十字に寝かし、釘を打ってその上に見事に木は立てられた

色紙で飾り付け、白い綿を千切って枝に乗せた
本物の雪のように見えた

家の電気を消し、点滅する小さな豆球を付けた時

わっと叫んだ

とっても嬉しかった

父も母も

笑っていた


その時はまさか、サンタがツリーまで作ってくれたとは思いもしなかったけど




持って降りた箱を広げる
プラスチックを繋ぎ合わせ支柱を立て、枝を広げるとあっという間にツリーができた

長い電飾を巻いて、赤いリンゴ、輝くボール、鈴、人形を飾り付ける
電飾にスイッチを入れると、クリスマスソングを鐘出でながら点滅する

箱の底には、プレゼントを入れる子供が入れるぐらいの大きな毛糸の靴下まで出てきた




その年どしの人気おもちゃをイブまでに並んで買ってきて、更にそれを子供達に見つからないように隠しておくのが、また一苦労だった


「サンタさんに何が欲しいか、手紙に書いとかんと、ちゃんとクリスマスプレゼントが届かんで」

兄弟が子供部屋に入って話をしてる

「僕は自転車にする。にいちゃんは?」
「え?プレイステーションじゃあなかった?」
「プレイステーションは、にいちゃんが頼むから僕は自転車がいい。」
「もっと小さい物がいいよ」
「なんで?」
「だって、自転車みたいに大きかったら、あの靴下には入らんやろ」
「でもたっくんに、今年のプレゼントは自転車を貰うって言ったんだ」
「それに父さんが買ってきて、イブまでに自転車を隠しておく場所に困るだろ」
「そうか、小さい物だったらいつも押し入れの奥に隠してあるからね」
「いい?今年もプレゼントはサンタさんが持ってきたって喜ばないと父さんが悲しむやろう」
「わかった。でもにいちゃん、僕たちがサンタがいるって、父さんはいつまで信じてるんだろうね」
「子供だってサンタはいないって知っているのに、大人だからいつかは、分かる日がくるよ」



いつの間にか

クリスマスが近づいても

プレゼント用の大きな靴下だけは
箱の底に収められたまま

外に出されることもなくなった

役目を十分果たし
ゆっくり休んでいるようだ





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