「寂聴 美のコレクション」 徳島県立文学書道館 文学特別展
現在、徳島県立文学書道館にて「寂聴 美のコレクション」展が開催されている。寂聴愛蔵の絵画、書、彫刻などの展示、そしてそれらの作品が寂聴の小説や随筆でどのように描かれたか、美術家との交流も含めて紹介。
瀬戸内寂聴は東京、目白台や本郷のマンション、また出家後に暮らした京都、寂庵でもお気に入りの美術品を身の回りに置き、創作のインスピレーションを得ていた。
その展示作品の中から、印象的なものをいくつかここで紹介したい。
(なお、以下の写真は徳島県立文学書道館 文学特別展 「寂聴 美のコレクション」パンフレットより抜粋させていただいた)
小説『おだやかな部屋』にも出てくる油彩画。展示では下に小説の一文も添えられており、その画と言葉の組み合わせから物語が立体的に立ち上がってくる。
体の線が妙に生々しい。熊谷の画風は、簡素な形態、明確な色彩、「モリカズ様式」と呼ばれた。実際の画自体の大きさは30センチほどで意外と小さい。『私小説』では表紙にもなった。
ポスターは1997年、寂聴の「源氏物語」現代語訳の出版に合わせて制作。最初、寂聴は横尾氏の「天井桟敷」のグラフィックを見て、その奇抜さに今様写楽だと、興味を抱いたという。寂聴の小説の装丁も数々制作。
今回の展覧会のなかでもサイズとともに存在感が大きかった作品。(横1.5m、縦1mくらいあるかも)日本ではウォーホールほど知名度はないが、アメリカのポップアートの主要な作家、アラン・ダーカンジェロ。ハイウェイを平面的に分割、また標識などの記号をモチーフとし、管理された社会の虚無感を表現。(余談だが、徳島県立近代美術館では3点ほどダーカンジェロの作品を所蔵しているようだ)
寂聴は、この絵を知人から、全く画家の名前も知らずに購入した。部屋に飾ると無限に空間が広がったという。デュラスの小説の余白のようなものを絵に感じる、と寂聴らしい感想。
寂聴とポップアート。その組み合わせが意外にも愉しい。
他にも、池田満寿夫から送られた観音彫刻や、榊莫山の墨絵、岡本太郎による寂聴(当時は晴美)の肖像スケッチなど、展示の美術品は多岐にわたる。
徳島は葉桜の季節。これから若葉芽吹くとき。お出かけついでにアートと文学の散策を、徳島県立文学書道館でされてはどうだろうか。
期間は、2023年4月8日(土)~5月28日(日)まで。