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譲れないこだわり

2021年8月8日22時ー。

米農家戸邊秀治さんのご長男である将棋棋士戸辺誠さんとのお電話を、その日時で指定された時、末広がりの数字でいい日だな、と思った。

当日は、10年以上ぶりだったこととお願いをする立場でもあることから、少し緊張しながら約束の時刻を待った。

私から電話をかけ、お互いに「ご無沙汰しています。お久しぶりです!」というところから話が始まった。
久しぶりに聞く誠さんの声は明るく力強く、丁寧でしっかりとしていて、なんだか心が温かく元気になっていく気がした。

改めて自分の想いを伝えると、誠さんは「父がどう言うはわからないけれど、自分として気になるのは、そもそも生産量がかなり少なくて年によって収穫量が変わることもある。特に今年は母が怪我をして父がほぼ一人で作業している状況で大変。今は出荷先も知り合いと、家族を中心にしているので、酒の仕込みに最低限必要300キロという量が確保できるかということ。あとは、そもそも戸邊米は、玄米で食べてもらいたい、と考えている米なので(※無農薬無肥料人力の徹底的なこだわりによって生み出されることにより、玄米まで安全で雑味が全くない他にない味わいであるため)、酒造りで米を削ってしまうというところがどうかなと。。父も相当こだわりがあって、お金で動くような人間でもないし、簡単に、はいそうですか、とは言わないと思う。自分が納得できないと、有名なテレビ番組でも断るような人なので」と言った。

私は、「そうですよね。。ただ、すいません、私もかなりこだわりがあるので、どうしても戸邊米がよくて、譲れないんです」と返した。

世界一希少な酒をつくるためには、日本で最も、本質的に価値のある米を使う必要がある。
日本一こだわりのあるつくりで生産量も僅少の米は、戸邊米をおいて他にないのだ。

私の想いを聞いて、誠さんは「わかりました。父に話してみます」と言ってくれた。

翌日、「父に話しました。自分の作った米が日本酒になるということに関して興味は持ったみたいです。いいと言うかどうかはわからないですけど、絶対に断るつもりという感じはしませんでした。電話は大丈夫みたいなので、話してみてください」と、誠さんからの連絡を受けた。

戸邊さんに誠意と熱意を伝えるため、自分が新潟まで伺って直接お話するつもりでいたけれど、思いがけずまず電話でお話しさせていただくことに…。直接お顔を見ずに、会ったこともない自分から、どこまで想いが伝わるだろうかー。

そんな不安もよぎったけれど、21時までなら電話を受けられるとのことだったので、善は急げで、すぐに電話をかけた。

※戸辺誠七段のYouTubeチャンネルはこちら↓
https://www.youtube.com/channel/UCiHAedeiqrrCeiLSZlaLv3A




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