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Bonus Clips ~戸邊家宿泊~

クルーが撤収作業にあたっている間、私が持参した浮世絵を自分の車に積むのを、戸邊さんも手伝ってくれた。
当初の予定では夕方早めに収録を終えて長野に帰るつもりだったけれど、すでに時刻は20時を回っていた。

「今日、どうするの?もしあれだったら、うちに泊まっていったら?」と戸邊さん。
戸邊さんのお宅にはこれまで4回訪ねているけれど、一度も泊まらせていただいたことはなかった。
「うちに泊まればいいのに」「いつでも泊まりに来ていいよ!」と過去にも言っていただいたことがあったけれど、タイミングが合わなかったり遠慮もあって、かなわなかったのだ。

「お言葉に甘えていいですか。。私、実は戸邊さんのお宅に泊まってみたかったんです!」。
私は素直に自分の気持ちを伝えた。

「なんだぁ!じゃあおいでよ!」と戸邊さんは笑い、「何食べる?何食べる?」と嬉しそうに聞いてくれた。

松之山温泉で入浴を済ませてから、戸邊さんのお宅へと向かう。
周囲があまりにも暗く、道がわからなくなって、同じところを何周かした末にたどり着いた。

食卓には、焼き鮭やひじきの煮物、昼食にいただいた汁物、そしてもちろん戸邊米のご飯が用意されていた。
「お昼の残り、ニンニク入れてチャーハンにしてみたんだけど」と奥さん。何度でも言ってしまう、私は戸邊家の食事が大好きだ。
煮物でもきんぴらでも、砂糖やみりんは使われておらず、甘みは戸邊米の麹由来のものなのだけれど、とにかくどれも味付けが自然で、素材が元気に生きている感じがして本当に美味しい。
そして戸邊さんと奥さんと、向かい合って食卓を囲めることが嬉しい。

私が持参した撮影の残りの飛騰を、お二人はマグカップで飲んだ。
いつもきちんと片づいていて、本当に必要なものだけがあり、全て大切に使われている。そう感じられる戸邊さんのお宅にいると、足るを知る豊かで幸せな暮らしがここにあるのだ、と思う。

撮影の感想や戸邊さんの健康法について、2時間ほどゆっくり話をうかがったあと、初めて上がらせていただく2階の部屋で、休ませてもらった。
部屋には、棚いっぱいに詰まった健康法や栄養・農法に関する本。戸邊さんが長年、学びと実践、改良に費やしてきた時間を垣間見ることができた。

翌朝は、コーヒーをいただきながらまた色々なお話をした。
話の中で出た「本物っていうのは、みんなが大事にするでしょ」という戸邊さんの言葉が、胸に響いた。
本物をつくりたいし、戸邊さんのように、自分自身が本物でありたい。

「今回の取材は、柴さんからきた話だから受けたのね」と、ふいに戸邊さんが言った。
私はハッとした。
戸邊さんの農法や暮らしを世界中に知ってもらいたいという気持ちが強く、また海外からの取材に浮足立ってもいたけれど、戸邊さんにとってはリスクを伴うものだったのだ。
稲を脱穀せず長く干しておくことは、デメリットでもあっただろう。
過去多くのテレビ番組に出演する中で、戸邊さんの発言や取り組みの真意を理解せず、中傷する人たちもいたことをご本人から聞いていた。
それでも、私の想いを汲んで、出演してくださったのだ。
そのお気持ちが本当にありがたく、頭の下がる思いだった。

帰りの車の中で、私は泣いた。

本当にたくさんの人たちの力と温かな気持ちに支えられて、この飛騰燈火がある。
だからこそどうか、その結晶のようなこの酒の素晴らしさが、世界中に伝わりますように…。

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