バーテンダーししょーの"音楽を中心とした空間演出術"
どの店でも当たり前のようにかかっている音楽BGM。
それにはその店の考え方や、自己表現、スタイル、などなど・・・いろんなものが反映されている。
振り返ると、自分は開業当初のコンセプトから音楽で創る空間演出に関してはあまりブレたことがないな、と改めて思う。
今回は、そんな自分の在り方や、演出方法をもとに音楽が創る空間演出について話してみたい。
店の在り方にもよるので、どれが正解ということはないが、私の在り方を一つの参考基準にして、それぞれがどう思ったりどう創るのか、考えていって欲しい。
ではまず、当店の音楽やBGMについてのコンセプトであるが、
そのコンセプトは今も変わっていないと思う。当時のオーナーと共に作ったコンセプトだが、私にとってもそれが居心地が良く、お客様もそれがあるから来てくれるのだ。
開業当初は、たいした酒もなく、修行したわけでもないから、腕もなく、かなりしょぼくれた店だったと思う。インターネットやSNSがまだそこまで普及してなかったおかげで悪評を立てられず、生き残って来れたのかもしれない。
そんな中、この街で唯一稀有な店だと言われていたのが(今でもだが)
この街で静かに話せる店はここしかないんだ。
そんなしょぼくれた店でも、若さや将来性を見込んで、わずかに常連になってくれる人がいて、そんなことを言っていた。
そのコンセプトは、当時のオーナーも自分も掲げていたコンセプトで、小声で喋って、ちゃんと相手に伝わるような空間の作り方を音楽で演出しなければいけなかった。
でも、その会話が静かでも弾むために最高の音楽、音質、選曲、素人なりにもいろんなことを考えていたと思う。
当時、いただいたプレイヤーやジャズレコードのおかげで唯一そこだけは素人でも守れた。
そのおかげで、自分もジャズやレコード、オーディオが好きになり、今でも時折オーディオに変化などをつけたりしてこっそり楽しんでいる。
会話が弾むためには、ただボリュームを絞ればいいというものではない。それならば有線放送やサブスクなどで音楽を垂れ流し、なんとなくボリュームを絞ればいいだけになってしまう。それでは駄目なのだ。
時間や空間は生の命を持った生き物である。同じ人が来ていたとしても、日によって、その人の気分によって毎回違うものだ。
それを感じ取り、お客様が醸し出すシチュエーションに合わせ、
どのオーディオを使い、
どのアルバムを選び、
どんなボリュームでかけるか?
お客様の会話のドラマに合わせた選曲ができるか?
いろんなことが必要になってくる。
時に、会話に夢中になっていたお客様でさえ、その空気感が良すぎてどういう空気なのか気になることがある。そんな時にどのように選んでどのように空間を創ったのか、伝えられるためにも、こういった生きた空間を創ることを毎日感じ、学んでいかなければいけない。
それは決して、ただの音楽垂れ流しで得られるものではない。
毎日の空気や時間に神経を研ぎすまし、ひたすら感じ続けていくこと、その中で得られる情報から、空間を創り続けていくこと、その積み重ねである。
まぁ、学ぶと言うと堅苦しいし、真面目臭いので、純粋に自分自身もその空気感や空間創りをひたすら楽しむ、と言ったところであろうか。
言葉で『ああしろ』『こうしろ』と言うだけでは一朝一夕に学べるものではない。
ブルース・リー的に言えば
感じろ!
そんなものである。
とにかく、高い酒や、珍しい酒、カクテルの腕、それがあるだけでは、最高のBARの空気感というものは創れない。酒の知識や腕だけで来るなら、ほとんどのBARは潰れたりはしていない。
とはいえ、当店も21年経った今、腕がないというわけにもいかない。ここまで来ると
飲食店なんていうものは腕はあって当然。
大前提であり、問われる部分ではないのだ。
今回のテーマを挙げておきながら、自分がやってきた21年間の経験をすぐにやれと言うのは酷な話であるなぁと思う。
しかしながら、せめて簡単に口で言えるポイントぐらいは、これから書く文章や、写真などを参考に、少しでも良い空間が作れる近道を創っておきたい。
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