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「バナナになりたい きいろいくつ下」


このお話は、5歳の長男に「なんかお話して」と言われて、思いつくままにしゃべった即興の素話です。
即興なので、ストーリーとしておかしなところもありますが、ご容赦ください。


きいろいくつ下は、バナナになりたいとおもっていました。

たっくんの足に履かれているとき、たっくんが食べているバナナはとても美味しそう。
いい匂いがするし、たっくんはバナナが大好きみたい。


「いいなあ。ぼくはバナナになりたいな」

右のくつ下が言いました。

「ぼくもさ。ねえ今夜、バナナに会いに行ってみようよ」

左のくつ下が言いました。


ふたりは、みんなが寝静まった夜。
たんすを抜け出して台所のカゴで眠っているバナナたちに会いに行きました。



「こんばんは」

黄色いくつ下が挨拶すると、バナナたちは目をあけました。

「やあくつ下くん。こんな時間に、どこへお出かけ?」


「ぼくたち、バナナになりたいんです」


くつ下がそう言うと、バナナたちは顔を見合わせました。


「どうしてバナナに?たしかにぼくたち、色は似てるけど、ぜんぜんちがうよ」
バナナくんは、不思議そう。

「だって、バナナくんは友達がいっぱいいるでしょう」
「ぼくたちは、たったふたりだよ」

くつ下くんがそう言うと、バナナは笑って言いました。

「たしかにぼくらは、5人組。
でも、ひとつずつ食べられちゃったら、最後にはひとりぼっちだよ」


「でも、バナナくんたちは、離れ離れにならないでしょう」
「頭がつながっているものね」

くつ下くんたちがそう言うと、バナナは一斉に頭を見上げました。

「たしかにぼくたちはつながっているけど、食べられる時はもぎ取られるんだ」

「これがけっこう痛いんだから」




「でも、バナナくんたちは、いい匂いがするよね」
「ぼくたちいっつも、なんだかクサいよ」

くつ下くんたちがそう言うと、バナナたちは笑いました。

「たしかにぼくたちはいい匂いだし、味もとっても甘いんだよ。だけどときどき、食べ忘れられて、黒くてぶちょぶちょのドロドロになっちゃうんだ」

へぇえ。
くつ下くんたちは、おどろきました。
バナナたちに、そんな秘密があったなんて。
いつも美味しく食べられているすがたばっかり見ていたけど、バナナもけっこう大変みたい。



すると、話を聞いていた、窓の外の大きな月がこちらを向いて、言いました。

「バナナさんと、くつ下くん。
君たちは黄色で、長くて、似ているけれど、できることはそれぞれ違うね。
自分だけの役割に、もっと自信をお持ちなさい」

そう言うと、まんまるのお月様は、いっそうまぶしく輝きました。
黄色の大きな月を見ながら、くつ下くんとバナナさんたちは、いっぱいいっぱいおしゃべりをしました。



次の朝。
「おはようー!」
たっくんが、起きてきました。

「お母さん、昨日は月が綺麗だったね!」

「そうね、黄色く輝いていたわね」

たっくんは、いそいでテーブルにつくと、朝ごはんのパンを頬張りました。

「お母さん、ぼくバナナも食べたい!」

お母さんは、それを聞くと、黄色いバナナを一本もぎ取りました。
バナナはのこり、4本になりました。


朝ごはんをすませたたっくんは、今日の服をたんすから引っ張り出しました。

「今日は、このTシャツと、黒いズボンと、それからこのくつ下!」

たっくんは、くつ下を両足に履くと、靴も履いてかばんも持って、元気に家を飛び出していきました。


足元のには、黄色いくつ下。




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