今年も、紅葉の季節が来たね。
紅葉の季節だ。
わたしの住む町は、紅葉の美しい神社やお寺、公園がいくつもある。
遠方から、観光バスに乗って、たくさんの人が見に来ている。
近所のイチョウの木がすっかり黄色くなっていて、長男に「イチョウが綺麗やね」と言うと、「イチョウって何?」とキョロキョロする長男。
あれえ?
分かっているはずなのになあ。
本や図鑑でも見たし、園で落ち葉拾いに行ったとか言ってたし。
分かっているようで、分かっていないのが、子どもである。
この世界には美しいものざたくさんあるということを、彼はまだ知らない。
それがもう、美しい。愛おしい。
残念ながら、イチョウの木の横は通り過ぎてしまったので、「ホラ、黄色くて、割れたうちわみたいな形の葉っぱあるやん」と、がんばって口頭で説明した。
長男は「ああ!あのひっくり返したホウキみたいなやつね」と頷く。
(え?それはイチョウか?モミジだって、ホウキに見えますやん)と、内心合っているのか不安だったが、これ以上説明しても分かるまいと思ったので、とりあえず「それそれ」と返事をした。
園についたら、教室のドアに「この前拾ったおちばコーナー」というのがあって、ちゃんとイチョウも貼ってあった。
おもわず「あそこ!あれや!」とでかい声が出た。
長男、「ああ〜知ってる知ってる」。
今度こそ、ほんとうに分かったという顔をして、長男はニコニコと教室に消えていった。
◇
長男を送り届けたあと、次男を連れて、近所の公園に散歩へ出かけた。
広い公園で、遊具はほとんどない。
代わりに、木がたくさんあって、芝生の上には色の変わった葉っぱたちが落ちて、辺り一面に広がっていた。
どの木の下にあるかによって、葉の色がぜんぜん違う。
あっちは赤、こっちは黄色。
緑も茶色も紫もあって、文字通り「色とりどり」だった。
同じ公園の中で、これだけたくさんの紅葉が見れるなんて。
なんだか、お得な感じがする。
残念ながら、昨日の雨で、木についた葉はだいぶ落ちてしまっていた。
地面も濡れて、やや葉が傷んでいる。
でも、綺麗だった。
「秋だなあ」というひとことが、心の底からしみじみと湧き上がって、消えた。
次男は「色」が好きなので、ひとりで、「いーろ、いーろ、なーにいろ?」と叫んでは、カラフルな葉っぱをいっぱい集めた。
ほんとうは、どこか有名な紅葉スポットをおとずれて、時間をかけて散策してみたい。
でも、子どもたちはそれだと飽きてしまうし。
なにより、近所にこうして美しい紅葉を楽しめる場所があるのだから、まあいいか、と満足してしまう。
秋だなあ、紅葉だなあ。
そんなことを思っている間に、寒くなり、木枯らしが吹いて、秋は唐突に去っていく。
今だけだ。
下を見れば、地面に落ちる葉を踏みしめて、上を見れば、空と赤黄色のコントラストが。
この季節の、この季節だけの景色。
うんと味わって、寒い冬をお迎えしよう。