東京旅行日記その6(二日目/二〇二四年五月二十三日)
新国立劇場の演劇鑑賞。
東京にはあまたの劇場があるが、今回は高校演劇の聖地を選択した。
演目は『デカローグ』の第5話と第6話。
ポーランドの映画監督キェシロフスキーが作った、モーゼの十戒をモチーフにした連作ドラマ。全部で10話ある。
各話独立しているとは言え、多少のつながりはある。
取りこぼしはしたくないので、事前に北海道大学付属北図書館で全話見た。
全部とは言えないが面白いものもあったし、シリーズとしての思い入れもできた。
地図上では都心から離れているように感じて敬遠していた下北沢を経由し、初台の劇場に到着。
近くの東秀という札幌にはない中華のお店で遅めの昼食をとる。
劇場自体も楽しみにしていたので開演の1時間くらい前に5階建て内部に入る。
ステージは3か所。
4階の客席を持つ巨大なオペラパレス、そして中劇場と小劇場。
あちこちに飾られているオペラの衣装の豪華さを楽しむ。
マティス展がかなり前の出来事のように感じる。
この時点でたいぶんくたびれているので、どこか休めるところがないかなとフラフラしているうちに5階の屋上庭園にたどり着く。
こじんまりとした芝生のスペースだが、誰もいない。
ホントにここに入って大丈夫だろうかとキョロキョロしながら入る。
ベンチに座ってしばし休憩。
東京にしては珍しく空が広い。飛行機が飛んでいるのも見える。
渋谷の群衆につかれていたのでありがたい。
そろそろ動くかと庭園を出て、ついでという感じで情報センターという図書館みたいなところをのぞいてみる。
閉館間際だったが、スタッフさんとちょっとお話ができた。
専門外のオペラやバレエが多いようだけど、公演記録の映像も見られるし、スタッフさんのオススメも聞けるようなので、チャンスがあったらまた来てみたい。
『デカローグ』は小劇場で行われる。
座席の組み方にもよるけど、「小」と言っても二階席含めて400席はある。
席種は2種類で安い方のチケットを購入した。2階席だった。
自分の席は舞台に対してほぼ垂直方向に設置されているので、舞台を見ようと思うと首を90度近く左に向けて見続ける感じになる。とても見づらい。
お金がない学生さんなどを想定した席なのかも。
第5話は特に理由もなく人殺しをした男と死刑反対論者の弁護士の話。
第6話は覗き趣味の男が覗き相手の女に付きまとった結果、女がすべてを受け入れて男に謝罪する話。
雑なあらすじの説明に本作への気持ちを読み取ってもらえれば幸い。
未体験だからって何やっても許されると思うなよ。
ドラマ版デカローグで順位をつけるならワースト1と2がこの2本だった。
それならわざわざ観なくてもと思わないでもないが、現代の人がやるからには何かそれなりの工夫があるのではないかと思っていた。
特に見つけることができなかった。
事前準備しすぎたので、後に引くこともできなかった。
単純にこちらの疲労もあったのかもしれない。
舞台美術はすごい。
余韻に浸ることなく、次の目的地に向かう。
新宿のDDTプロレスが経営するエビスコ酒場。
一駅二駅の交通費をケチって歩くが、股ズレで内股がヒリヒリする。
加えて汗でぐちゃぐちゃ、血は出ていないが、出ているかもしれないと思える不快さ。
さすがに暑い中、歩きすぎたかもしれない。
とはいえ、ほんとうに五月でよかった。
これで夏本番の時期を選んでいたら、確実に熱中症で動けなくなっていたはずだ。
仕方なくネット検索して新宿駅近くのソラスパという温浴施設を見つける。
エビスコ酒場の営業時間や山手線の終電は気になるものの、一度、汗を流さないとどうにもならんと判断して風呂に入る。
平日の遅い時間ということもあってか、屋外の喧騒が嘘のような静けさのなか、お湯につかる。気持ちいい。爆発的な勢いのジャグジーだけ怖い。
エビスコ酒場に到着。
女性のグループ客から濃度高めのプロレストークが聞こえてくる。
あんまり店員さんと話すタイプではないので雰囲気だけを楽しむ。
そのつもりだったが、店員さんに帯広さやか選手がいることがわかって、静かに興奮する。今はそこまで積極的にリングに上がっていないようだが、アイスリボン時代によく試合を見ていた。家にサインもある。
帰りにちょっとだけお話させていただいて出る。
何を話したのかはあんまり覚えていない。
山手線の新宿から日暮里。宿に戻る。
狭いカプセルブースの中で、今日一日の出来事を思い返す。
充実というか、あきらかに詰め込み過ぎた。
とはいえ、ペースは落としたくない。
この東京旅行、詰め込めるだけ詰め込んで帰りたい。まだまだやる気はある。
翌日の予定の最終調整を行い、就寝した。
この狭い空間には慣れつつある。
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