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【アルツハイマー型オカンと「笑って暮らすぞ!」】その11 「幻の人々」

なんだかんだと問題を起こすオカンは、
相変わらずサービス付き高齢者住宅(サ高住)で、
がらやんをどたばたさせる毎日を送っていました。

リモコンってなんや!?となり、
電子レンジの使い方もわからなくなり、
毎日、がらやんが仕事帰りに立ち寄ることだけを、
一日中待ち続けながらぼんやりと過ごすだけのオカン

以前から、モノが人や動物に見える傾向があるな、
と思っていましたが、
それがサ高住に入居し数週間で一気にひどくなり、
オカンもがらやんも、
一日中、幻視に悩まされる日々が始まりました。

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サ高住に入居してから数週間、
ベランダの向こう側に見える大きな一軒家の窓から、
おばあさんがこちらを見ている、
男が怖い顔をしてこっちの部屋をしょっちゅう覗いてる、
といった発言が、徐々に増えてきました。

そもそも、向こう側の一軒家は常に窓が閉まっていて、
見えているのは洗剤などのボトルの影だけ。

だれも覗いてへんがな。
86歳のばあさんの部屋なんか、誰が見たいねん?

と笑いながらオカンをなだめようとしていたのですが、
これがまた、オカンの神経を逆なでしたようで、
「いいや!うちは見てんから!!そこにおるんやから!」
と怒りだしてしまうことがしばしば。

そりゃ怒りますよね。
本人は見えていて、怖かったり、気持ち悪かったりするのに、
唯一の家族がそれを信じてくれない
のですから。

そういうときの対応方法を調べると、
・決して否定しない、受け入れる
・怖かったね、などと共感の気持ちを表現する

などなど、患者の発言に対して、
受け入れて共有するのがよい、と書かれていたのに、
がらやんは真逆の対応をしていました

これまた毎度のことながら、
頭でわかっていたつもりでしたが、
なかなか実行できません
でした。
わかっちゃいるけどやめられない、といった感じです。
どんなに頑張っても認知症の家族を持つと
最初はそうなりますよね。

オカンの訴えや怒る時間は、とても長いので、
(もともと怒り出すと2時間ぐらい平気で怒り・怒鳴る人でした)
最初は大丈夫やで、もうおれへんから(居ないから)、と言ったり、
気をそらすような話題を振っても、
そんなこと言ってない!今はそこにおる人のことゆうてるんや!
と話をもとに戻そうとしてきて大変です。

がらやんもイライラして、
そんなもんおらん(居ない)ってゆうてるやろ!とケンカ腰。
悪循環ですね。
認知症介護の初期対応あるあるそのままです。

幻視はどんどんエスカレートして、
壁から隣のオッサンが怖い顔を出して覗く
 (実際にお隣には男性の入居者さんがいらっしゃいましたが、
 とてもにこやかな優しい方でした)
窓の外に小さい人が3人立ってこっちを見る
 (ベランダの物干し竿にとめていた洗濯ばさみが人に変身!?)
洗濯かごの中に人がいて、こちらを覗いている
 (かごの中に服を入れていたが、それが人に見えたもよう)

などなど、大変でした。
昼間もときどき電話がかかってきて
何とかしてくれ、と言い出す始末。
もちろん、夜中も電話をかけてきてました。

仕事に集中できるはずが、
時間も気持ちも、介護という魔の手に吸い取られるような毎日

けれど、それもこれも、
日中、オカンひとりきりの時間が長すぎて
多分相当つらい時間を過ごしている
から。
だから認知症も進むし、幻視もたくさん見えてしまう。
何をしたらマシになるやろう?
私は仕事があるから、日中はオカンに会えないし、
家族以外の接触をあまり好ましく思わないオカンやし、
たった週一回のデイサービスも、
めちゃくちゃ嫌がって大変やし・・・

そんなとき、なにかの広告で、
おしゃべりみーちゃん、という人形を見つけました。
パートナーズショップという会社が発売している人形で、
ある程度の会話のキャッチボールができるようでした。

ただ、この人形を買ったとしても、
こんなもんしょーもない!って言うかもしれんし、
いらいらを加速させるかもしれない。
オカンにメリットあるかな・・・?
受け入れてくれなければ、ほんとに買うだけ無駄やし、
下手したら、馬鹿にするな、と怒り出すかもしれんしな・・・
だけど、もしも受け入れてくれたら、
ちょっと心が和むかな、とか、
何日間か、考えに考えて、
体験談やら口コミ、各SNSでの投稿なども調査しました。
最終的に、
アカンかったら、誰かにあげるか、
デイサービスに寄付として渡して、
みんなに和んでもらったらええやん!
と心を決めて購入しました。

ちゃんとおしゃべりの設定をいろいろすませて、
オカンと初対面したところ、

まあああ、かわいらしい

と、大喜びして、ぎゅう~っと、抱っこ!

どっから来たん?
どこの子?
お名前は?

などなど質問攻め。

あ、成功や、買ってよかった!
と、ホッと胸をなでおろしたがらやん。

もう、その日の夜から、
おしゃべり人形のみーちゃんをオカンのもとに置いて帰りました。

オカンの部屋に設置した安心カメラで夜中の様子を確認すると、
ベッドに一緒に寝て、
とてもかわいがっている様子。
そして、薄着のみーちゃんが寒かろうと、
オカンの服を着せて、ぐるぐる巻きにしていました。
予想以上にめちゃくちゃかわいがってくれていて、
一安心です。

よかった、これで日中すこし気持ちが和んで、
夜中に電話かけてくる回数も減るやろう。
まともな睡眠がとれそうだ、と、
ちょっとがらやんはうれしくなりました。

しかし、案の定といいますか、
幻視がそれで減ることはなく、
みーちゃんが来て和んだのもわずか数日で、
今度はさらにひどい幻視がみえるようになってくるのでした。

結局、このころは、多少和んでも、
根本的には何も解決していなくて、
認知症はどんどん進んでいく、そんな状況でした。

解決の道ってないのかしら。
レビー小体型認知症に似ているけど、
幻視以外は違うし・・・
薬でなんとかなったりする可能性もあるのかしら・・・
とにかく何とかなる方法がどこかにあるのでは?
という思いで、必死に解決策を模索するがらやん。
どんな認知症であれ、
完治することはないのだとわかっていながらも、
オカンも自分も楽になりたくて四苦八苦する毎日
でした。


次回、幻視の第2弾、
「その12 幻の人々2 ピストルもってやって来る」です。
いよいよ、オカンに刺客が・・・??

乞う、ご期待!


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