地位財の罠:なぜ不景気でもハイブランド品が売れるのか?
地位財という聞き慣れない言葉がある。これは一言で言えば、自分のポジションを顕示するような財である。
たとえば、カバンや衣服のハイブランド品、住居、車などである。
これに対して非地位財というのは、お金で買えないが、人生に欠くことができない財である。たとえば健康、人間関係、家族、自由な時間などがこれにあたる。
地位財は生きていくうえで必要不可欠なものではないので、貧しくなれば売れなくなるような気がするが、案外これがそうでもない。さほどお金に余裕がない層がハイブランド品を持ち歩くのはよく見かけることだし、日本全体で見れば所得格差が開いているのに、ハイブランド品市場は拡大しているという。この矛盾はどこからやってくるのだろうか。
ある研究によれば、人は自分の地位が脅かされると地位財を購入したくなることが示されている。実験で、プライドをズタボロにされたりすると、自分の心を護るかのように、地位財にお金を出そうという気持ちが高まるというのだ。
そう考えると、おそらく貧しくなればなるほど地位財が欲しくなるのだろうし、国が傾けば傾くほどハイブランド品が売れていくことになるのだろう。
ただし、この手痛い状況を回復する方法もある。自分が持つ非地位財に心をはせればいいのだ。自分が持っている健康や自由、家族、コミュニティなどを考えることで、地位財欲求を減らすことができる。
私自身、何が正しいかはわからない。ただ、死ぬときに「これでよかった」と思えるような生を送りたい。
【参考文献】
Sivanathan, N., & Pettit, N. C. (2010). Protecting the self through consumption: Status goods as affirmational commodities. Journal of experimental social psychology, 46(3), 564-570.
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