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動機づけで認知疲労は改善するのか?

疲労というのは身体的なものだけではなく、認知的なものもあります。とりわけデスクワークが主になった現在では、頭を使うことで生じる認知疲労が問題になっています。

一般に疲労にはモチベーションが絡んでいると言われており、報酬が高ければ疲労感も少なくなり、報酬が少なければ疲労感を感じやすいことがわかっています。しかし報酬を提示することで認知疲労は改善するのでしょうか。今回取り上げる論文は、認知疲労と脳活動、報酬の関係について調べたものです。

精神的疲労とモチベーションがニューラルネットワークダイナミクスに及ぼす影響。 EEG コヒーレンス研究
The influence of mental fatigue and motivation on neural network dynamics; an EEG coherence study

実験では被験者に認知課題を2時間行わせ、認知疲労を誘発しています。そして最後の段階で報酬を提示し、脳活動がどのように変化するのかを調べています。脳活動は脳波で測定したコヒーレンス(脳波電極間の同調性)を指標としています。このコヒーレンスは脳活動の同調を示すもので、例えば前頭部の電極と頭頂部の電極のコヒーレンスの強さは、この2つの領域が協調して働いていることを示唆しています。


Lorist et al., 2009, Fig 4

さて実際にコヒーレンスを見ていくと、課題が進み疲労感が増していくとともに脳内コヒーレンスも強くなりますが、課題を提示しても元のレベルのコヒーレンスには戻らなかったことが示されています。

Lorist et al., 2009, Fig 5を参考に筆者作成

このように考えると、たしかに報酬には認知疲労を軽減する効果があるものの、認知疲労が進行した段階ではその効果は限定的なのかなと思いました。

Q: この手の研究をもうちょっと読みたい
明日読む論文:
精神的疲労は、タスク関連ネットワークの低下と DMN 活動の亢進と相関しますが、報酬回路は損なわれません。
Mental fatigue correlates with depression of task-related network and augmented DMN activity but spares the reward circuit

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