数値で見てみる格闘技:K-1とRIZIN
こんにちは。
以前の記事では、プロキックボクシングの人気がMMA(Mixed Martial Arts:総合格闘技)等に比べて落ちてきていること、そのためキックボクシングからMMAに転向する選手が多いこと、それでもキックボクサーは能力が高いことなどを書きました。
今回は、キックボクシングとMMAの現状の違いについて、日本でそれぞれの主要団体であるK-1とRIZINを取り上げて、イベント入場収入やファイトマネー等の差がどれくらいか見ていきたいと思います。尚、公開されていない数値も多いため、仮の数値や推察を使っていますのでご承知おきください。
格闘技ファンの方はもちろんのこと、格闘技ビジネスに参入したい方、格闘技のスポンサーになりたい方、格闘技関係者の方、興味がある方など、見ていただけますと幸いです。
RIZIN
団体概要
2015年から旗揚げの団体です。人気、ファイトマネーなどが高く、日本最大の格闘技団体と言えます。
イベント集客数
2024年は7大会開催されています。うち、5大会は収容1万人前後の会場で行われており、残り2大会は最大5万人程度収容可能なさいたまスーパーアリーナで行われています。実際、各大会の客入りはよく、5大会ではそれぞれ1万人前後、2大会では計約7万人程度の集客だったようです。
イベント入場収入
入場収入を算出してみます。上記より2024年の全大会の集客数は約12万人です。チケット代を、通常の会場で2番目に安いチケット(S席:22000円)とすると、
イベント入場収入=12万人×22000円=約26.4億円と考えることができます。
イベント放映収入(PPV収入)
RIZINはPPV(ペイパービュー)により有料放送をしています。PPV収入は、PPV購入料金×PPV購入件数で求めることができます。ここで、PPV購入料金を5500円、2024年の1大会あたりのPPV購入件数を15万とすると、
PPV収入=5500円×15万件×7(大会数)=約58億円と考えることができます。
参考:2023年にさいたまスーパーアリーナで開催のRIZIN 45のPPV件数が30万、その他の大会でも平均で10万件を超えるという話があります。
団体運営のyoutubeについて(2025/1/25時点)
チャンネル登録者数:約127万人
投稿動画本数:4306本
動画総再生数:約10.6億回 → 1動画当たり、平均約25万再生
となっています。
RIZINは大会終了してしばらくすると試合動画を公開しますが、公開後、すぐに数10万再生であったり、100万再生を超える動画が多いと思います。
選手のファイトマネー
公式に公開はされていませんが、超人気選手や王者で2000~3000万円には達するようです。また、一定程度の実力のある選手、人気のある選手などでも数100~1000万円には達するそうです。以下のように、選手からファイトマネーに言及するコメントも出ています。
「ファイトマネーの額は地方の家一軒って感じ」
(朝倉未来選手、youtubeちゃんねるにて」
「次の試合に勝てばファイトマネーが4桁にのる。K-1とは桁が違う。」
(安保瑠輝也選手、K-1からRIZINに転向後、3戦目を前にして」
「ファイトマネーは全部この350万円くらいのネックレスにつぎ込んだ」
(芦澤竜誠選手、K-1からRIZINに転向して2戦目の後)
K-1のファイトマネーについては後述しますが、K-1からRIZINに転向後、ファイトマネー面で満足している声が多いようです。
K-1
団体概要
日本の代表的キックボクシング団体です。1993年の旗揚げから2000年代前半頃までは絶大な人気がありましたが、近年は人気下降中であり、RIZINなどに転向する選手も多い状況です。
イベント集客数
前提として、K-1グループには、K-1だけでなく、K-1の傘下としてkrushというキックボクシングイベントがあります。また、K-1本戦出場のための予選大会をいくつか海外で開催もしています。ここで、収益的な関係性や詳細が不明なため、海外大会については今回扱わないことにします。
2024年はK-1が5大会、krushが13大会行われています。それぞれについて、実際の集客数は公開されていないので、会場キャパシティや集客率などから推計することにします。
K-1の会場はよくガラガラであると言われるため、客席稼働率は低いと思われます。よって、K-1会場の客席稼働率を5割、比較的会場熱のあるkrushのそれは7割とすると、代々木第一、第二体育館をよく使うK-1は各大会4000人程度、後楽園を使うkrushは各大会1000人程度の集客と考えることができます。
上記をもとに、2024年のk-1とkrushの合計集客数を計算すると4000人×5大会+1000人×13大会=33000人と考えることができます。
イベント入場収入
チケット代を、通常の会場で2番目に安いチケット(AまたはS席:10000円)とすると、入場収入=33000人×10000円=約3.3億円と考えることができます。
イベント放映収入(無料+有料放送)
K-1グループは大会ごとに無料放送と有料放送を使い分けています。krushの大会では、Abemaでの無料放送を毎回実施していますが、K-1については、月額1000円程度のAbema プレミアムあるいは、購入代金6000円程度のPPVなどで放送しています。また、海外向けの放送についても詳細が不明のため、このイベント放映収入の数値については今回扱わないことにします。
ただし参考として、Abemaの無料放送ではkrushの視聴数は数万~十数万程度であり、K-1のPPVについてもネット上でどれだけの人が買っているのか?という疑問の声が多く、そもそもPPVで放送することによる批判も多いため(誰も買わねーよなど)、PPVで1大会10万件を超えると考えられるRIZINよりは収入面で大きく劣ると考えられます。
また、海外向けの放送についても、以降に述べる海外向けyoutubeの動画再生数を考慮すると、まだ大きな収益ではないのではないかと推察されます。
団体運営のyoutubeについて(2025/1/25時点)
K-1のyoutubeチャンネルは国内向けと海外向けの2つがあります。
国内向けチャンネルについては、
チャンネル登録者数:55万人
投稿動画本数:11547本
動画総再生数:約7.1億回 → 1動画当たり、平均約6万再生
となっています。
ただし、体感的には6万再生を超える動画はここ1年以内では少ないように思われます。
海外向けチャンネルについては、
チャンネル登録者数:約2.2万人
投稿動画数:181本
動画総再生数:約396万回 →1動画当たり、平均約2万再生
となっています。
海外チャンネルを作成したのは最近ではありますが、再生数はかなり少ないと言えます。
選手のファイトマネー
公式に公開はされていませんが、王者クラスで 100~200万円程度のようです。それなりに強い選手であっても、数十万円の場合も多いそうです。以下のように、選手からファイトマネーに言及するコメントも出ています。
「王者になっても年間3,4試合でサラリーマンの平均年収ぐらい」
(安保瑠輝也選手、K-1からRIZINに転向後に当時を振り返って」
「木村ミノル戦で10万円、ゲーオ戦で45万円」
(平本蓮選手、K-1からRIZINに転向後に当時を振り返って)
「ファイトマネーはクソみたいな金額。(30万円くらい?という質問に)だいたい合ってる」
(芦澤竜誠選手、K-1在籍時のコメント)
激しい戦いをするには見合わないファイトマネーということが言えると思います。
まとめ
・イベント集客について、RIZINは通常の大会で1万人前後の集客であり、さいたまスーパーアリーナのような大会場を用いれば、3万程度の集客も見込めます。一方、K-1については、会場を埋めることは難しく、各大会数千人程度の集客と考えられ、入場収入でRIZINと10倍かそれ以上の差はありそうです。
・イベント放映収入について、RIZINはPPVにより1大会平均10万件以上の購入があると考えられ、年間で数十億以上の収入になると考えられます。一方、K-1の放送については詳細がわからず、数値上どのくらいになるかはわかりませんが、PPV放送をすることに批判があることや、youtube動画の再生数を考えると、収入面で大きくRIZINに劣ることが考えられます。
・ファイトマネーについては、RIZINとK-1で10倍以上の差があると考えられます。K-1王者クラスであっても、定期参戦しているようなRIZIN選手にファイトマネーで劣ることは多々あると考えられます。
・団体運営のyoutubeについて、動画の再生数の平均はRIZINで約25万、K-1で約6万再生(海外版は約2万)ではっきりしていますが、最近の体感としては10倍以上の差があるとも思えます。
おわりに
K-1とRIZINでは、イベント集客数、ファイトマネーなどで大きく差があるため、K-1などのキックボクシングからRIZINに転向する選手が多い現状はやむを得ないと思います。
ただ、私はキックボクシング贔屓のため、主要なプロキックボクシング団体たるK-1とRIZINのこの数値の差が今後少しでも縮まっていってほしいと願います。
ここまで読んでいただきましてありがとうございました!また機会があれば、もう少し先に進んだことを書いていければと思います。