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【創作大賞2024オススメ】ずっと親友(ともだち)

こんにちは。鳴海  碧(なるうみ・あお)です。

読者応援期間も、いよいよ最終日ですね。本日は、こちらの作品をご紹介したいと思います。

皆様もご存知、大人気作家のマナリさん。
私が応援しても、武道館ライブの後方席でペンライトを振る程度のインパクトにしかならないのですが、それでもやはり、マナリ作品なくして創作大賞は語れません。

枯れ専女子の鳴海としては、数多のマナリ作品の中でも、この『ずっと親友』をイチオシしたい。トップ画像から胸キュンです。渋い!こんな渋いおじ様とお近づきになりたい!

内容についてはここでは詳細は書きませんので、皆様も是非読んでくださいね!

マナリさんの作品は、長編であっても読みやすく、没入できるのが魅力ですが、その秘訣は「余白の美学」にあるんじゃないかと、私は個人的に思っております。
ストーリーの筋がしっかりしている、人物像や感情の描写が丁寧、しかし、どこかにフッと余白がある。その余白に、読者はスルスル〜と感情移入と自己投影をして、「これは私の物語でもある」と共感できるんじゃないでしょうか。
なんでもかんでも細かく描写しようとする理系な私としては、是非見習いたいところです。

このお話を読みながら、私は下の小説を思い出しました。

note世代の方は、幸田文をあまりご存知ないかもしれません。
幸田露伴の娘で、露伴の死後に50歳で文壇デビュー。古い日本映画が好きな方は、成瀬巳喜男監督『流れる』、市川崑監督『おとうと』の原作者と聞けば、ピンとくるかも。

『ずっと親友』と『北愁』は全く異なる物語ですが、遥か遠くに隔たれた二人が、滅多に会えないにも関わらず、互いを思いやり、時には苛立ちながら、心の支えにして生きていく、という点で共通しています。そして、再会のたびに強い結びつきを再確認する。そこに、じわじわと胸に沁み入る感慨があります。

『北愁』は、主人公のあそぎ(女性)と、10歳年上の「いとこ」である順治の、30年余にわたる物語。
二人は特に恋愛関係に陥る訳でもなく、それぞれに結婚して家庭を持ち、遠く離れてそれぞれの人生を歩みますが、心底では互いを分かり合い、励まし合う関係です。

下記は、物語のクライマックス。
主人公のあそぎが、病に倒れて死期を迎え声も出せなくなってしまった順治と、病室で対面するシーンです。

「(順治の)左手がさし出され、こちらの手を求められた。その手のひらへ『いとこ』と書き、封をするように親指から一本ずつ折りまげて、あそぎに握りこぶしをつくり、その上を両手でくるんだ。あそぎはこの間の時、順治がしたように唇をあけ、大きく息を吸い、そして息を吐きだし、溜息をして涙をごまかした。いたわって、順治はこちらを見守ってくれていた。」

ソウルメイトとも言うべき親友との出会いは、まさに僥倖と言えます。
私にもそんな存在がいるだろうか…と自分の足元を照らし見た時、実は孤独であることに気づき、暗澹となるのです。

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