池袋再開発後記
今回の24年度JET春号で池袋再開発をテーマに選んだのには明確な理由があった。単に今回の部誌のテーマが立教と関係するものという点もあったが、一番は新入生にこの街が「生きている」ことを伝えたかったからだ。ちょうど3年前、共テ利用で受験した私は、実際に立教大学を訪れるどころかどこにあるかさえもあまり理解していなかった。入学後は案の定何をしたらいいのか分からず、駅近くのビックカメラの家電売り場やリフォームコーナーで時間をつぶしていたのが懐かしい。しかし、そんな私でも3年も過ごせば愛着が湧く。当初は慣れなかった駅構内の人混みも、今やすいすいと歩くことができる。そんな折、ふと再開発の見出しを新聞で見つけ、かつての私同様あまり池袋を知らない新入生に、大学を取り囲むこの街へ興味を持ってもらう良いきっかけになると考えた。
記事でも触れたように、現在の池袋は急速に再開発が進んでいる。長らく定着していた暗い街というレッテルに抗い、現在では秋葉原や中野に次ぐサブカルの街としてのイメージが浸透しつつある。だが街の人間はどう感じているのか、特に外から来た人ともともと住んでいる人で意見に相違があるかを知りたかった。西武百貨店へのヨドバシカメラ出店は、そういった意識の差を調査する上で格好のテーマだと思い、そこを軸に記事を構成することにした。
取材中、街の外からやって来た男子学生と生まれたときから池袋に住む男性の意見が印象的だった。興味深いのは、ヨドバシ出店計画については賛成・反対と分かれたものの再開発に望むことについては一致していたことだ。両者とも未来の池袋像に「個性的な街」を望み、唯一無二の街となることを期待していた。このとき、私はふと思った。「池袋らしさってなんだろう」。確かに、東口は整備されどんどん綺麗になっていく。サブカルがこの街の「らしさ」として押し出されている。そこに便利さや快適さが生まれる一方でどこか寂しさを感じていた。そもそも立教大学が位置する西口にはラブホが乱立し、歯が1、2本抜けた爺さんが闊歩するような妖しさがまだ残っている。このごちゃごちゃ感を抜きにして池袋を語れるものだろうか。池袋らしさとはなんだろう。それはサブカルなのか、妖しさ漂うディープさなのか、快適さなのか。何かの縁でこの大学にやって来た諸君も、大学生活を通じてこの街の片鱗を感じ取り、「池袋らしさとは」という問いに答えを見出してみてほしい。そのとき、池袋は単に大学がある街ではなく、生きた街として表出するはずだ。
執筆:滝元耕志