新科目「情報Ⅰ」詳説-第四章 情報通信ネットワークとデータの活用:大学入学共通テスト新教科「情報」を知る7
今回は、2022年度の学習指導要領における新科目「情報Ⅰ」の中の「第四章 情報通信ネットワークとデータの活用」について、その内容や現行科目である「情報の科学」・「社会と情報」からの主な変更点を確認していきます。
この章で特筆すべきは、データの活用についての扱いが大きくなった点です。
第二章の記事でもお伝えしたとおり、「社会と情報」の学習指導要領では、情報通信ネットワークはコミュニケーションと紐付けて章立てされており、データの活用を表題にした章はありませんでした。
今回の学習指導要領には
「情報通信ネットワークを介して流通するデータに着目し、(中略)次の事項を身に付けることができるよう指導する」とあり、データの活用も重要な位置付けになっています。
更に、【高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)】第4章・巻末にはこの章全体を通じた学習目標として「情報通信ネットワークの管理,運用ができ,データベースや Web 上のテキストデータ, オープンデータ等を可視化,分析する力を育成する」と記載されており、
(ア)情報通信ネットワークの仕組み
(イ)データの蓄積・管理
(ウ)データの分析
という3つの構成要素をそれぞれ学習した上で、最終的にはこれらの要素を組み合わせて問題解決に結びつける能力を習得させることがこの章では求められます。
例えば、質的データ分析の応用として人工知能の活用方法について考えさせるような内容もこの章の学習範囲として指定されています。場合によっては章の導入時にフックとして人工知能の仕組みについて軽く触れてから学習をスタートする、という方法も考えられるでしょう。
実際に授業で行う演習としては、例えば、web上に公開されているオープンデータの中から、一見しただけでは傾向が読み取れないようなデータを探し出し、必要に応じて整理・可視化・分析させて傾向・問題点を探し出させるような実習などが想定されます。
可能であれば前章で学習したプログラミングを活用できると学習の理解がより深まりますが、プログラミング言語によってはデータ分析に不向きな場合もあるため注意が必要です。この章でプログラミングを使うことを想定して授業を進めるのであれば、前章ではPythonやVBAなどのデータ分析に適した言語を選択しておくとよいでしょう。
なお、この章で扱う内容については、中学校技術・家庭科技術分野の内容である「D 情報の技術」の「情報通信ネットワークの構成と,情報を利用するための基本的な仕組み」と中学校数学科の領域である「D データの活用」についての学習を踏まえた内容になっています。
この章の指導準備の際には中学校での学習内容も確認しておくと、授業の導入がよりスムーズになるでしょう。