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ダンテ『神曲』(中国語)に挑戦してみた(記事106)

ダンテの『神曲』を購入しました。

中国のネット販売(淘宝)で三冊セット。定価98元(約2000円)がほぼ半額の48元でした。
中国も紙の本が売れなくなっていて、ドンドン安くなっています。

なぜダンテ?というと、ここ20年ほど中国の古典ばかり読んできたので、西洋の文学にも触れてみようと思ったことと、挿絵に使われている版画を見たかったからです。

さっそく『神曲』の内容です。
『神曲』は『地獄』『浄界』『天堂』の三部作(日本語だと『地獄』『煉獄』『天国』)からなります。

有名な版画はこんな感じです。作者はフランスのギュスターヴ・ドレ(古斯塔夫・多雷)です。

三篇それぞれ約300ページありますが、半分近くが注釈と挿絵なので、本編のページ数は150ページ程度です。

まずは『地獄』篇を読んでみました。

しかしこれがなかなか難しくて、宗教的な寓話とか、歴史背景とか、登場人物を理解していないと理解できません。注釈が非常に多いのが納得できます。本文を数行読んだら後ろの注釈を確認する、この繰り返しです。

毎日少しずつ読み続けて、かれこれ一ヵ月ほどしてやっと『地獄』篇を読み終えました。

それにしても、キリスト教の異教徒に対する容赦のなさはすごいですね。
有名なギリシアの哲学者(プラトンなど)もキリスト教徒ではなかったため、天国に行けません。地獄の入口でウロウロしています。プラトンの時代はキリストが生まれていないので、キリスト教徒になれなくて当然なのですが。

本を読み進めていくと地獄のランクがあがっていき、ダンテと敵対する者やキリスト教の敵とみなされている「罪人」が、つぎつぎに残酷な罰を与えられていきます。

中国の道教なんかは、仏教も儒教も取り入れて何でもありのような感じがしますし、『西遊記』なんて仏教の話でありながら道教の神様と共存しています。
それに比べてキリスト教の厳しさは、驚きを通り越して恐怖を感じました。敵に認定した「罪人」に対してはこれでもかというほど報復を繰り返します。私はキリスト教徒ではないので、ダンテが敵としている人たちも、私にとっては必ずしも敵ではありません。そのため、「ちょっとやり過ぎじゃない?」という思いが生まれてきます。

今でも宗教をきっかけに世界で戦争が起きています。日本人の宗教観では、頭では「宗教戦争」と理解しても、感覚的には理解しにくいのではないかと思います。本来、神様というのは平等なはずで、戦争なんてもってのほか、人類みな兄弟、異教徒にも慈しむ心をもつもの、これが日本人的な宗教観ではないでしょうか。でも、『神曲』におけるキリスト教の宗教観に少し触れてみて(数百年前の宗教観ではありますが)、宗教とか信仰といったものに対する理解が少し変わった気がします。

今回、『地獄』篇を読み終えましたが、もうお腹いっぱいです。『浄界』と『天堂』はいずれ気が向いたら読もうと思います。


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サノマ(中国生活をつづったり、写真・画像を整理するノート)
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