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中国の中学二年生が読む本 旧ソ連の文学『钢铁是怎样炼成的』(記事92)
元旦前に読み終わった旧ソ連の歴史小説
『钢铁是怎样炼成的』
ロシア語ではこう書くようです(私は読めません)
『Как закалялась сталь』
日本語にも翻訳されていて
『鋼鉄はいかに鍛えられたか』
という題になっているようです。
中国では中学二年の時、「語文」(日本の「国語」)の授業で習うため、本の購入を薦められます。
我が家は長女(現在高校一年)が中学二年の時に買ったことを忘れていて、昨年、次女用に二冊目を買ってしまいました。
こちらは長女が読んだ本。
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こっちが次女用に新しく買った本です。
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次女用(下の写真)の本には左上に「八年級下」と書かれています。「八年級」は義務教育の八年目に当たる中学二年を指し、「下」は後期を意味します(中国の学校は9月から始まり、前期・後期の二期制です)。
長女用(上の写真)は翻訳が優れているようで、文章が読みやすかったのですが、部分的に省略されているところがあったので、次女用(下の写真)の少し難解な方を読みました(後に両方の「あとがき」を読んで分かったのですが、長女用は省略したのではなく、版本が違うため、内容に若干の差があったようです)。
さて、前置きが長くなりましたが、本の内容です。
どちらも中国語で約400ページあり、かなりのボリュームです。
作者はウクライナ出身のソ連人・オストロフスキー。
(ウクライナはソ連の一部でした)
小説の主人公はパーベル・コルチャーギン(中国語では「保尔・柯察金」)という青年で、物語の多くの内容(特に後半部分)は作者の実体験が元になっているようです。
パーベル・コルチャーギンは貧しい家庭に生まれたウクライナの青年です。
帝政ロシアが崩壊してソビエト連邦が成立する中、パーベルも共産革命に参加してたくましく成長していき、党の幹部にもなります。しかし、ある戦闘で背骨に傷を負い、それが原因で数年後には体が動かなくなり、やがて目も見えなくなってしまいます。新国家建設の大事業に直接参加することができなくなったパーベルは文学の道に進み、革命の記録を書き残します。
第一次世界大戦、ロシア革命、ポーランドとの戦争、白軍(反共産勢力)との内戦などなど、当時のソ連がこんなに混乱していたという歴史はまったく知りませんでした。また、反革命勢力がユダヤ人を虐殺したり、婦女を強姦したり、かなり生々しい描写もあるため、読んでいてつらくなることもあり「中学二年生が読んで大丈夫?」と少し心配にもなりました。
作者のオストロフスキーも小説の主人公と同じく体が不自由になり、目も見えなくなりましたが、病床で文学活動を続けたようです。そして、1935年にレーニン勲章を受章しましたが、翌1936年に32歳で亡くなりました。
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『钢铁是怎样炼成的』(『鋼鉄はいかに鍛えられたか』)は共産革命を賛美する内容なので、ソ連の崩壊を知っている私たち資本主義陣営側の視点で見ると、空しさのようなものを感じるかもしれません。また、複数の女性との恋物語や友情に関するエピソードもありますが、全体的に描写が淡々としていて、正直、物足りないです(トルストイの『戦争と平和』の方が面白いです)。
そういった本に対する感想とはまったく別次元のことですが、ウクライナの青年が共産革命を信じてソ連建国のために奮闘する姿を想像したら、複雑な気持ちになりました。今、ロシアとウクライナは敵対する国家として戦争状態にありますが、もともとは同じ国で、ウクライナ人もロシア人も協力して革命に邁進していたんだなあ、ということを今さらながら思い知らされました。
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