板書とは

研修会社(企業から社員研修を請け負う会社)が、
講師として契約する人には、最初に「模擬講義」をさせます。
合格すれば、それ以降の講師を依頼します。

先日久しぶりに模擬講義をしましたが、
そこで30代と思われる研修会社の担当者から
「板書は受講生のノートになるもの」
という発言があって驚きました。

1.学校教育の中の「板書」

学校教育では、私の時代(1970~80年代)には、
たまに「ノート提出」をさせる教師がいましたが、
それ以外の教師は板書を写すことを強調していませんでした。
むしろ生徒の方が板書を写そうとして、
走り書きされた板書を見て
「それは何て書いてあるんですか?」
なんて質問していました。
板書を写すことに神経が行って、
授業を「聴いてない」ので、
走り書きされた文字が読めないのです。
大概の教師は「喋りながら書いている」ので、
話を聴いていれば、板書の文字はわかります。

時代が下って、1992年の「新学力観」指導要領から、
「意欲、関心、態度」という定性的なものを、
定量的な評価に繋げていこうとして、
態度(=板書を写す)が重要視されたのかも知れません。
2002年改訂指導要領は「ゆとり教育」として有名です。
ただし本来のゆとり教育は1980年改訂以降のことです。
私自身は1971年の「現代化カリキュラム」で教育を受け、
もっとも「詰め込み」が激しい時代でした。
おそらく、件の担当者は、
1992年指導要領で教育を受けた人でしょう。

2.企業研修(職業訓練)の中の「板書」

企業研修でも板書はしますが、
だんだん「パワーポイント」に置き換わっています。
ただし、パワーポイントの教材が
「板書の完成形」であるのに対して、
大切な部分は「板書の経過」です。
ですから、パワーポイントには完全に置き換わらず、
板書も併用されています。
企業研修では「使えるようになること」が重要ですから、
板書を写す教育はしません。
板書を写す方に気を取られていて、
話を聴いてない状態というのは、頭に残らないのです。
私は受講生に「授業を聴く」ことを重視させます。

3.知識の獲得過程

知識の獲得過程(教育目標)を分類した
アメリカの教育心理学者のB.S.ブルームは、
その段階を
記憶→理解→応用→分析→総合→評価
としています。
認知心理学では、記憶を深化させて理解する過程を重視します。
維持リハーサルと精緻化リハーサルと呼ばれます。
維持リハーサルは単純に短期記憶に維持するためのもので、
精緻化リハーサルは長期記憶に記憶するためのものです。
私の講義では、これを実現するために、
(間が空きすぎとも言われますが)ゆっくり話します。
最初に「この【間】は、考えるための時間です」と言っています。

4.専門教育と「板書」

職業訓練や企業研修など、
それぞれの「専門家」が教育を行います。
中学・高校も弱いながら同じ傾向があります。
中学・高校の教員免許は、
大学の学部別に、取得出来る教科が分かれています。
経営学部でマーケティングを研究していた学生が、
教員免許では「商業」という科目を取得出来ますが、
簿記会計などの知識がなくても担当可能です。
職業訓練や企業研修では、より「専門性」が求められます。
いずれにしても「該当部分の専門性」です。
例えばプログラミングの講師はプログラミングの専門性を持っています。
事務の講師はマイクロソフトオフィスなどの専門性を持っています。
ただ、これらの「専門性」を持っていると言うだけで、
教育の専門性を持っていないことが多いのが実情です。
中学・高校の教員免許にしても、
教育学に関しては最低限度の知識しか学んでいませんし、
簿記学校や情報専門学校の講師に到っては、
教育学そのものの知識がないことが多いものです。
私は「教育のプロ」として、
教育学系の研究もしていますので、
「教育効果を最大限に発揮する研修」が可能です。
それを私は、昔から使い続けているネット上のハンドルを付けて、
「与太郎式指南術」と名付けています。


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