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『バッタを倒すぜアフリカで』で焦る

ここ数年で面白かった本ある?と聞かれると、私は『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎/光文社新書)をお薦めしている。ちょうどコロナ禍で旅行や外出が憚られる時期に読み、「読書=世界中を大冒険♪」だと改めて実感させてくれた本である。ステイホームの息苦しい部屋で、大きく開けた窓からアフリカの砂漠を見渡したような気分になれた忘れられない1冊だ。そしてサバクトビバッタの生態はもちろん、意外と知らない研究職の方々のギリギリの生き様を垣間見ることができたのも面白かった。…というか、すみません、バッタより、私が強い関心を持ったのは前野先生の生態の方でした。

この本を映画にするなら、そうだなあ、主演は山田裕貴にして、原作まったく無視の映画オリジナルキャラクターとして二階堂ふみを恋のお相手に…と私の中で着々と映画化の話も進んでいたのだが、映画が公開される前に続編『バッタを倒すぜアフリカで』(光文社新書)が出た。わーい!

本作は、『孤独なバッタが群れるとき』(光文社新書)の噛み応え抜群の専門性と前作『バッタを倒しにアフリカへ』のキャッキャ♡ウフフ感をちょうど足して二で割ったようなほどよい案配の1冊だ。前作では、正直、前野先生、ちゃんと研究は進んでるんだろうか…とたまに不安になったりもしたが、どっこいちゃんとガッツリ研究に邁進されていたのである。心配してごめんなさい。

好きなことを仕事にしたいというのは、最近では幻想と呼ばれてるが、少なくとも私が就活していた時は私も含めてそういう野望を持っている人が多かった。(そして、内定もらえず儚く散っていった)

前野先生は、まさしく好きなことを仕事につなげている方で、好きだけでは到底乗り越えられない苦難を知恵と知識と情熱とでもってねじ伏せている。暗闇の砂漠でのバッタの解剖シーンや、研究施設を求めての交渉、実験器具を自作するためのプラ容器大量お買い上げ、など、好きじゃないと無理だけど、好きだけでも無理、そんなバッタの研究に全てを捧げる前野先生の情熱がとにかく読んでいて心地よい。読書とスポーツ観戦は似ている。一生懸命頑張る人を見る(読む)だけで、こっちも勝手に活力をもらえるのだ。

そして強火ティジャニ担ヲタクの我々にとって嬉しいことに、今作ではまるまる1章がティジャニの話である。自分が働かなくても儲かるシステムを夢見るティジャニとそれに投資した前野先生とのエピソードの顛末は、あまりにも脱力するとともになぜか同時に勇気をもらえる。
「なんだろう。私の人生、もうちょっとテキトーでもいいのかしら。とりあえず明日から頑張るとして夕飯は手抜きのご飯にしよう」という具合である。ありがとうティジャニ。

そして前作でバッタとW主役と言っても過言ではなかったゴミムシダマシさん達も、ほんのチラリとだけど登場して嬉しかった。食べるのはパスタだけではなかったのね。解剖後のバッタの行く末がすごく気になっていただけに、ゴミダマさん達の役割を改めて切なくもありがたいと思った。

とにかく前作に続き、今作も満足度の高い1冊でほくほくしていると、なんと著者の前野ウルド浩太郎先生のトークショー&サイン会が開かれると知った。え、行きたい、それは行きたい!婚活パーティー兼ねたイベントでないなら、既婚の私も行って良いよね?と最寄りの会場の日程を調べたが、楽しみにしていた中村倫也の舞台のライブ・ビューイング前日であった。

さすがに2日続けて外出するのは家族の手前気が引ける…前野ウルド浩太郎か、中村倫也か。この年齢になってここまで究極の選択を迫られるとは思わなかった。

思い起こせば、奇しくもこの2人は、コロナ禍のステイホームで行き場のない思いを大いに慰めてくれた大恩人二大巨頭ではないか。(YouTube「中村さんちの自宅から」本当に良かった)
ギリギリの二者択一を迫られた、中年女の揺れる思いである…どうしよう、焦る。




【追記】断腸の思いで中村倫也を選びました。前野先生、また大阪に来てください。待ってます。


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