いつの時代も、人々は巨大なものに一種のあこがれを抱くのでしょう。前人未到の山頂を踏破したいと夢見る者もあれば、高層ビルの高さ世界一を追い求める人々もいる。
巨大ロボットのアニメに目を輝かせる子どもたちもいれば、その実物大模型に興奮を隠しきれない大きなお友達もいる(べつにいいじゃん)。
住戸規模の大きさゆえ「マンモス団地」と呼ばれるところは各地にあるのですが、建物自体に威圧されるとなると、かなり限られてきます。そんな見るものに畏怖の念すら抱かせる建物を求めて、足は一路川崎へ。
2023.12.27
長いこと揺られてやってきました川崎駅。年末にふとしたことで腰を痛めてしまったので、かばいながらの電車移動がツライ。いきなり流れ悪いわ😵💫
10年以上ぶりに来ましたけど、いやぁ~きれいになってるね。むかしは線路を挟んで表川崎と裏川崎みたいな雰囲気だったけど、そんな歴史はまるで無かったことになってます。
駅から歩くこと15分。目の前に大きな団地群、河原町団地があらわれます。ここは1972年竣工。今から約50年前、つまり半世紀前の建物です。
各棟そこそこの規模があり、各々独立しているところもあれば、連結されているところもある。
一階は商店街になっており店舗が軒を連ねているのですが、シャッターが降りている店も多い。停まっている自転車の数を見る限りでは入居者も多そうだけれど。
人通りはまばらで、高齢者が多い。年の瀬で書き入れ時のはずだけど、全体的に静かな雰囲気です。この最奥部、正面の棟の裏手にはスーパーがあり、集客が一極化してしまったのかもね。
階段の踊り場が窓側に面している。プライバシー的にこの配置は問題では?😅
黙々と階段を登っていく。
床に現れるフロア表示。最上階に到着しました。
屋上への道は閉ざされている。いちおう施錠を確認します。いちおうね。
左右の棟は橋のような渡り廊下で接続されている。空から見るとちょうど「日」のような構造になっており、この橋は中央の横棒にあたります。
向こう側を眺める(下は覗かないように😰)
左右の棟の通路はけっこうな長さがある。ワンフロアで何部屋あるんだろう。数えなかったけれど、高さも14階まであるし、この長さだし。建物全体で考えると気が遠くなるね。
通路を突き当りまで歩いていくとエレベータホールがありました。窓の向こうにはさきほどの橋が見えます。
ああ、部屋数の表示板があったわ。2棟連結で82戸×14階=1,148戸😱。両端にある「ダスト室」の表示がここの歴史の古さを物語っています。
丸窓がオシャレです😛
遠くに見えるあちらの建物も河原町団地の一部。棟によってバラエティ豊かなデザインが見られるのもこの団地の特徴です。
ダスト室。ほかの多くの団地ではすでに運用が廃止されたダストシュートも、ここでは現役で稼働しているようです。
災害対策用品もまとめられている。自治会がしっかり機能していることの証かもしれません。
たまに人が顔を出すくらいで基本的に静まり返っているんですが、共用部もきれいで清掃も行き渡っている。
都市部が一望できる眺めを楽しんでいたら、陽が傾いてきました。
急いで降りてきて次を目指す。
ここでの飼育は禁止だから、周辺に住む散歩中の人でしょう。しかし、飼い主の責任だとはいえ、無関係を決め込んだこの表情はどうなのか🐶。
そして少し歩くとハの字型に足を広げたような風変わりな巨大建造物が目の前に現れる。ここが4号棟です。この正面の向こう側に5号棟、6号棟がつながっています。(位置関係は冒頭の地図をご覧ください)。
その巨大な口へ吸い込まれるように中へ入ってみる。あたりを包みこむ柔らかな光。
光と影のコントラストに思わず目を細める。
目が慣れてくると、えらく現実的な警告文がありました。「青少年よ!!」という呼びかけに時代を感じます。「マナーを守ろう!!」😃
建物の屋根の下に街灯があるという、だまし絵のような世界観。
恐ろしい数の自転車が停めてあるけれど、どれも整然と並んでいました。マナーがいい!!😃
振り向くと入ってきた入口が向こうに見える。この巨大さ、漏れてくる光、無機質なコンクリートの質感。かつてどこかで見たような感覚を覚えたんだけれど、いまわかった。これ、首都圏外郭放水路だわ。
さらに奥へ進み5号棟に到着すると、中央の中庭にはカラフルな円形のオブジェクトが。
これだけ戸数が多いとさっきの自転車置き場だけでは足りないのかな。
子どもたちの遊び場か、住民の憩いのスペースか。しかし、ここを訪れる人の姿がない。5号棟を抜けて、その先にある6号棟を目指します。
6号棟はふたたびハの字型のドーム構造。しかし、それにしてもデカイ。飛行機とか巨大ロボットの格納庫といった趣だね。カラスの声も退廃的な終末感を演出してくれます。
音量注意!
つづら折りに階段が上階へと続いている。
階段の上から見下ろす。下を歩く人との比較で、ここの広大さがよくわかる。悪ふざけで身を乗り出し、うっかりしたらシャレにならん。
階段を上り切ったその先には――
近未来都市のような、デザイン重視の(ちょっと生活しにくそうな)共用通路が伸びていた😵
音量注意!
5号棟へ戻ってきた。こちらの棟にもダスト室。室名プレートのフォントが素敵です。
高齢世帯にとってはゴミ捨ての往来もしんどいので、ダストシュートは重宝がられるのかも。
自分のフロアに自転車を置いている人もいるんだね。イタズラ対策だろうか。
茶室みたいな謎のミニ扉😆
6階から8階は中二階に停まるってことなのかな。
階段で最上階まできました。
この上には屋上があるはずだけど――
屋上は閉鎖されていました。ま、しゃーない😜
コツコツと歩き回るおれの足音だけが響く廊下。
窓を通して差し込む冬の明かりが床に影を作る。50年前と同じ空気がここにある。