見出し画像

「蕎麦が何ちゃら」というエッセイを書きながら「ラーメン食べるために京都まで行く人」やらせてもろてますー

「蕎麦にうるさいヤツはめんどくさいヤツが多い」というエッセイを書いています。

 最寄りのラーメン二郎までは県をまたいで車で2時間を要す。もはや最寄りというには寧ろおこがましく、完全に遠征と言えるかも知れない。2年前に2カ月ほど休職していたゆっくり時間の取れる期間に、思いついたように妻に下の子を連れて京都店へ行ったのが始まりであったが、そこから時間を作っては定期的に京都店へ訪れることが日課になっていた。
 下の子がまだ3歳で、週に一度だけ幼稚園に通い始めた年で、登園日を避けながら予定を組んだ。殺伐とした店内に3歳児を連れて入ることは憚られると、昼食と夕食の時間を普段から出来るだけ開けたい私が先に列に並び、一時間弱程で食事を終えて車へ戻り、今度は妻が列の最後尾に並ぶ。下の子は事前にローソンで買った昆布のおにぎりとからあげくんを食べながらYouTubeの画面に必死だ。一度だけ乳飲み子を抱っこ紐で背中に縛り付けた状態で食事をしているご夫婦を目の当たりにしたが、長時間並んだ挙句食事中にぐずり始めることを思うと至難の業である。

 ラーメン二郎自体は7年振り程であったように思う。確か前回は出張で関内店に並んだのが最後だった。店舗に依ってメニューが微妙に違い、汁なしが選べたりトッピングが豊富な店舗もある。最初にラーメン二郎を食したのは、確か鎌田店で当時付き合っていた彼女とデートの帰りであった。食事を済ませて彼女を送ってジムへ行く予定のつもりが、食後にはすっかりジムに行く気など失せていた。彼女はダイエット云々と言いながら、麺の上に盛られた野菜ばかりを食べていたのだが、ほとんど手を付けずに残った麺を私が平らげた。
 並んででも食べたいものかと言われると時間を作ってでも並んで食べたい。いわゆる二郎系と称されるただただもやしが山盛りにされたものが食べられる他店では満たされない何かが、直系二郎にはありそれを言語化出来ないのは私の語彙や表現力の問題かも知れない。食べればどういうものかは分かるものを、わざわざ活字にするものではないだろうと思っているのが一番かも知れない。
 久し振りにラーメン二郎を食して妻と入れ替わる際に、「好き嫌いはあると思うがやっぱり美味しいと思う。食べてみて」と非常に満たされた間の抜けた表情を浮かべながらそう伝えた。戻って来た妻も「これは凄く美味しい。また来たい!」と完全合意であったことから、ラーメンを食べるためだけに京都に通う夫婦が誕生した。
 京都店では辛味がいわゆる卓上の一味ではなく、真っ赤なスープの「辛いラーメン」が食せる。私は京都店では並のラーメンに生姜をトッピングするのが好みだ。普段は生姜を好んで口にする私ではないが、ラーメン二郎と生姜の相性は非常に良い。

 そんな私も、職場に復帰して仕事が忙しくなってからは専らラーメン二郎と言えば三田の本店というスタイルにシフトした。三田本店は朝の8時半から開店しており、始発の新幹線や飛行機で移動して都内入りした時間と調度良いのである。所謂出張時の儀式のようになってしまった。
 そんなこんな過ごしていると、「三田本店に並んで食べたが2度と行かない」などというSNSでのコメントを目にした。それに対して二郎フリーク達は「二郎はそういうものではなのである」と返していた。調度私も、ここ最近の三田本店では硬めの麺でオーダーしても柔らかめであったり、「こんな味だっただろうか?」思うことが実際にあったので、この投稿者のコメントに対してはそんなに違和感を抱かなかった。

 ラーメン二郎は定期的にSNS上で話題になる。当の京都店も「にんにく入れますか?」の回答を誤り「普通で」と返したお客に、「コンビニで袋要りますか?って聞かれて『普通』って答えるんですか?」と、あの短い時間にそう返せる店主も凄いなと思ったのだが、当然そのやりとりが話題になって大炎上していた。
 三田本店へ並ぶスタイルから、ここ最近は出張先で並ばない店舗のラーメン二郎をひっそりと食している。出来れば滞在期間中は毎日でも食べたい、その代わり晩酌を控えるというバランスを取りながら、翌週に控えた健康診断をすっかり失念していた私は、週3ラーメン二郎を食しながらも休肝日を設けて健康診断に臨んだ。
 それまで休肝日の概念など皆無だった私だったが、肝臓の数値が大幅に改善されており、こんなので良いならたまには休肝日くらい設けてやろうと思った。故にラーメン二郎はカラダに良いらしい。(違う)

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集