人権か、ヤクザの掟か、それが問題なのだ
昨日、ある人から「なんでロシアを擁護するようなことを言うんだ」と言われた。
「あなたはなぜ、ウクライナを支持しているのか、まずはそれを教えてくれ」
私がそう言うと、彼はこう答えた。
「権威主義と民主主義だったら、民主主義の方がいいに決まっているじゃないか」
彼はロシアとウクライナの戦争を「権威主義と民主主義の戦争」と思っているようだった。
それで、私はこんな話をした。
プーチンがエリツィンの後を継いでロシアの大統領になったのは2000年だが、彼はエリツィン時代からアメリカとは良好な関係を保っていた。
主要国首脳会議のことを「G7」というが、1998年から2013年までは「G8」で、ロシアも主要国の一つとして参加していた。ロシアとアメリカは「仲間」として付き合っていたのだ。
しかし、2013年の夏、ロシアとアメリカの関係は悪化する。アメリカの諜報員、スノーデンの亡命である。
ヤクザの世界では、組織から絶縁された者と付き合うことは御法度で、組織が他の団体に回す「絶縁状」には「この者と付き合うことは我々に対する敵対行為と見なす」などと書いてある。
国際政治もヤクザの世界と同じ。だから、どこの国もスノーデンの受け入れを拒否した。アメリカを敵に回すことになるからだ。普段、「人権は何よりも大事!」「人権侵害を許さない!」と言っては中国やイランを攻撃している西側諸国もスノーデンの亡命申請は無視した。
しかし、プーチンは違った。スノーデンの亡命を受け入れた。ヤクザの世界の掟よりも人権を優先したのだ。
翌年、アメリカはその報復(懲罰)としてウクライナの親露政権を打倒した。しかし、プーチンは引かず、クリミアを奪取。そして、ドンバスの内戦を経て、2022年2月の侵攻に至るのだか、この戦争の端緒は「権威主義と民主主義の戦争」ではなく、「人権とヤクザの掟の戦争」だったのだ。
スノーデンの亡命について、西側の学者は忘れたふりをしているが、この事件がなければ世界は違うものになっていたのである。
人権と民主主義は生産地が同じだ。だから、セットで語られることが多い。しかし、民主主義国が人権を無視することもあれば、独裁者と呼ばれる人が人権を守ることもある。
しかし、「プーチンは正しかった」とも言い切れない。プーチンはスノーデンの人権を守った。それはたしかだ。しかし、そのために国民を戦争に巻き込んだ。その責任は問われるべきである。
アメリカはヤクザの掟を貫くためにウクライナを鉄砲玉にした。その責任も問われなければならない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?