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【新しいケアのものづくり】会社員だった私がデザインリサーチ事務所を作った理由_女性社長コラム#12

女性社長.net編集部です。
女性社長コラムでは、女性社長.net会員様に執筆していただいたコラムをお届けしていきます。

【この記事はこんな方におすすめ】
・ユーザー視点を重視する経営者・事業主の方
・事業の「軌道修正の仕方」に悩まれている方
・「医療」「介護」「ものづくり」のキーワードで事業をされている方
・身近な「困りごと」を事業化したい方

第12弾となる「女性社長コラム」は、nenlinの簾藤麻木さんです。簾藤さんは、医療・介護分野で、新しいケアのものづくりを手掛けています。そんな簾藤さんに、企業のきっかけや事業継続するための軌道修正のこと、を書いていただきました。

それでは、どうぞ !



はじめまして。
nenlin(ねんりん)の簾藤麻木と申します。

医療・介護に特化したデザインリサーチの仕事をしています。
具体的には、医療介護施設の建設プロジェクトマネジメントのほか、医療介護現場のユーザーヒアリングや行動調査によって、ケア視点から建築や製品のコンサルティングを手がけています。

また『ケアのデザインストアねんりん』を主宰し、ケアの道具を通じて、暮らしの選択肢を広げる活動をしています。

はじまりは目の前の「困った」から

はじまりは10代で経験した祖母の介護でした。
それまで暮らしていた家や道具が病気で使いづらくなり、できないことが増え、引きこもっていく祖母。
介護の負担で母までも弱っていく…。

二人を元気にするためには、介護が必要な人が使いやすく、かつ使いたくなる、行動と心にアプローチする空間や道具が必要だと考え、建築の道に進みました。

大学卒業後は建築設計事務所に勤務しました。
色々な建物を経験し充実していましたが、建築設計は限られた時間の中で、膨大な与条件を整理する仕事。
一番力になりたかったケアが必要な人の声は、ほとんど聞けぬまま建物が完成していくことに葛藤を覚えるようになります。

実は「立ち止まるため」の起業

もっとエンドユーザーと一緒にデザインすることはできないか。

悩んだ末、一度立ち止まるために10年務めた会社を退職。個人事業主の柔軟さで、全国の医療・介護施設を見学し、実際介護施設でも働きました。

そうしてケアの現場に飛び込んでみたら、ものづくりの現場に届いていない多くのアイデアや声があると知りました。

「自分で」を手放したことで見えた強み

正直最初は自分で建築も道具も作ろうと思っていました。でも調べていくと、世の中にすばらしい製品はあるものの、完成までに膨大な時間がかかっていました。
一方で、時間もコストもかけたはずの製品が、ほとんど売れなかったという事例も。

理由はものづくりとケアの現場が遠く、現場の声を聞く機会が限られていたから。
検証に時間がかかったり、ニーズにズレが生まれていました。

社会に必要なのは「私が作ること」ではなく、
ケアの現場とものづくりの現場の橋渡しをすること。
そう気づいたのは、起業して数年経った頃でした。

走りながら、軌道修正しながら、強みに向かう

こうしてnenlinはケアの現場をリサーチし、ナレッジを工学につなぐことに特化。

「自分で」を手放したら、ケアの現場で力になれる領域や課題は大きく広がっていました。

起業から数年、はじまりと形は変わりましたが、走りながら考えてきことで見えたものがあります。

将来は工学とケアが共創するラボを作るのを夢みています!


最後に:自分を元気にする言葉

編集部:簾藤さんより、ご自身を元気にする言葉をいただきましたので紹介します。

「動く時は大きく動く」

私の祖母の言葉です。
幼くして父を亡くし母子家庭で育った祖母は、苦労も多かったのだと思います。柔和な外見に反して、非常に肝のすわった女性でした。

幼少期の簾藤さん。現在の事業に大きく影響を与えたおばあ様と。

そんな祖母は、

「迷った時は、機を見定めること、そして“動く時は、大きく動くように”」

と話していました。

開業以来、決断に迫られることが幾度とあり、時に理由をつけて手近な答えを選びそうになることもありましたが、祖母のこの言葉はいつも目を覚まさせてくれ、背中を押してくれるパワーになっています。

【簾藤さんプロフィール】
一級建築士。十数年にわたる祖母の介護経験から、病気や障害を抱えても、ものづくりから生きる自信は支えられると感じ、建築を志す。
早稲田大学大学院 建築学専攻修了。2008年株式会社梓設計入社。有料老人ホーム・保育園・学校・庁舎などを担当。2018年にnenlinを設立。2021年には、全国の良質なケアの道具を揃える『ケアのデザインストアねんりん』をリリース。数十時間にわたる現場での行動観察や、自ら介護士として働くなど、現場に飛び込み、医療・介護の現場の声とものづくりを結ぶ活動を続ける。

nenlin HP: https://www.nenlin.jp/

女性社長.netよりひとこと

簾藤さん、お忙しい中、コラム執筆をありがとうございました。

編集部が簾藤さんと初めてお会いしたのは、お茶の水女子大学主催で実施している中高生向け起業セミナー「リケジョ・イノベーション」の講師依頼でした。弊社メールマガジンで講師を募集した際、簾藤さんに手を挙げていただき、ご依頼したのがきっかけです。理系進学を迷う生徒に寄り添った講演や質疑応答が印象的でした。そのご縁で今回コラム執筆をお願いしました。まだまだ編集部も簾藤さんの事業のすべてを理解できているわけではありませんが、たおやかに前進しつづける簾藤さんの活動から今後も目が離せません…!

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