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【第1話】見えないキャリアアップ(解説編)/あのスタッフなぜ辞めてしまったのか?

最初はうまくいっている(ように見える)のに、いつしかすれ違い、
溝が深まる「オーナー」と「辞めていく人」。
いかに早く両者の認識のズレに気付き、離職の要因をつぶせるか⁉
これまでのストーリーを読み解いてみよう。
※第1話 見えないキャリアアップ ストーリー編よりご覧ください。

文・解説/多田 暢[melt]

第1話 見えないキャリアアップ(解説編)
離職のサインはどこにある?

登場人物
オーナー…………妻と2人でサロンを営む。
スタイリスト…27歳。最近、転職したばかり。

1.コンセプトの共有が大事

➀オーナーの視点
「アットホームなサロンで働きたいと思っている」と彼は言い、印象も良いので、採用することにした。
➊スタイリストの視点
前に働いていたサロンは、スタッフも多く、人間関係が複雑なところが嫌で辞めたため、そのサロンのアットホームな雰囲気に魅力を感じていた。
👇
解説
“アットホーム”のみが志望動機。入店までに、サロンのコンセプトや目指す方向性をしっかりと共有できていることがベストです。
離職警戒レベル 💣

2.マイナスの行動動機に敏感になろう!

➁オーナーの視点
その男性スタイリストは、やる気に満ち、撮影にも熱心で、新規のお客さまも少しずつではあるが、増えてきた。いつかは彼に店長を任せたい、と思っていた。
➋スタイリストの視点
新規客が少ないことに気付いた。もっと新規の方を呼べるように、みんなに撮影を一緒にやっていこう! と呼び掛けた。
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解説
行動の動機は、プラスの理由とマイナスの理由から。マイナスな側面にはすぐ気付くと◎。今回は、スタイリストの「新規の入客チャンスが少ない」という焦りから、行動が生まれています。
離職警戒レベル 💣

3.なぜそのタイミングだったのか?

③オーナーの視点
「地域の方々に愛されるお店を目指していきたい」というサロンの方向性を伝えた。
➌スタイリストの視点
オーナーから、目指しているサロンの方向性を聞く機会があった。
👇
解説
スタイリストにとっては初耳情報。オーナーにとっては、「やっと来たチャンス」かもしれませんが、これは採用時に伝えておくべきでしょう。
離職警戒レベル 💣💣

4.スタッフの立場で考える

④オーナーの視点
お店全体の売上も順調に伸びていき、サロン運営は問題ないと思っていた。
➍スタイリストの視点
僕は最近、新規客に入るチャンスが少ないことに不安を感じていたが、その時は何も言わず、聞いていた。
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解説
重視するところが両者違っています。オーナーはサロン。スタイリストは自分。だからオーナーは、彼の不安に気付けていません。もっとスタイリスト個人に目を向けるべきです。
離職警戒レベル 💣💣💣

5.サインはずっと出ていた

⑤オーナーの視点
彼の様子が少しおかしいな、と思うことが多くなった。
➎スタイリストの視点
ある日、美容師の友人に、新規に入れるチャンスがどれだけあるか、聞いてみた。
👇
解説
異変に気付いたなら、早急に話し合い、不安の解決策を探るべき。彼の心を引き戻すチャンスはまだあります。
離職警戒レベル 💣💣💣💣

6.もっとスタッフと向き合おう

⑥オーナーの視点
深く聞くのも怖いので、そのままにして、「また以前の彼に戻るだろう」と思い、いつも通り接するようにした。
➏スタイリストの視点
僕は、新規客にもっと入れるサロンに行きたい、と思うようになっていた。
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解説
「辞められたら困る」というオーナーの気持ちから、大事なことを何も聞けない、上辺だけの関係になってしまっています。もう手遅れですね…。
離職警戒レベル 💣💣💣💣💣

〈まとめ〉アットホーム、と思っていたのに…

 今回、最初に認識のズレが起こった原因は、「アットホーム」という志望動機にありました。スタイリストにしてみれば、温かい雰囲気の中、「丁寧に教えてくれる」という環境が気に入っていたのに、「新規客が少ない」という焦りから「サロン(オーナー)は自分をサポートしてくれない」と疎外された気持ちになってしまった…。

 オーナーが彼の不安にいち早く気付き、アットホームなサロンらしく細やかにサポートをしていれば、結果は変わっていたことでしょう。また、初めから「地域密着」という方向性を伝えていれば、スタイリストの行動も変わっていたはず。撮影ではなく、紹介客を増やすための工夫をし、今頃は地域のお客さまから支持を集める立派な店長に成長! …していたかもしれません。

〈第2話は「美容師楽しくない編」〉

PROFILE 多田 暢(ただ・のぶる)/1988年生まれ。東京都出身。日本美容専門学校卒業後、都内の大規模店に就職。6年間在籍し、広報部門やプロジクトリーダーなどを担当したことで、人事や労務、働き方に興味を持つ。
2015年、吉祥寺に「melt」をオープン。その後、’18年に2号店の「emis」、
’20年に3号店の「cofy」を同じく吉祥寺に出店。「スタッフの生活水準の向上」と「質の良い働き方」をテーマにサロンを運営中。

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