エピソード2 北欧人の子どもを産みたい?
ロドリゲスとルースはメキシカンレストランでブリトーを食べていた。
ルースがふと外を見ると、慌てたドードーが歩いている。声をかけてみた。
「こんにちは、ドードー!急いでどこに行くの?」
「やあ、ルースにロドリゲス!新しいスーパーの開店セールに行くとこなんだ。並びそうだからもっと早めに出るんだった。じゃ、また後でね!」
歩幅が小さいドードーを見送ってると、隣のテーブルに座ってる親子と目が合った。
ブロンドにピンクのメッシュを入れた若いお母さんと、金髪で青い目のキレイな赤ちゃん。
ルースは目で彼らに「やあ」と挨拶した。
ロドリゲスは「ドードーは何を買いたいんだろ?」と言い、親子には気づかない様子。「さあ、トイレットペーパーとか?」
赤ちゃんを見ていた時に、ルースはぼんやりとこんなことを思い出した。
ルースは日本の富山県に1年間英語教育の補助として働いていた事があった。国際交流のイベントに月に一回出て地元の人と話をしていた時のことである。
イベントの終わり際、ひとりの日本人既婚女性が一緒に来ていたママ友に「北欧の人と結婚して金髪碧眼の子を生みたい!子ども、かわいいだろうな〜!」と言った。そして、二人は他愛もなく笑い、喋りながら帰って行った。
ルースはその言葉を聞いて怪訝な顔をした。
「他人の見た目を人種の特徴でバカにしたりからかったりするのは差別だけど、
自分より優れてるとかかわいいとかって思うのも逆差別にならないかな?しかも、遺伝的に考えると夫の特徴が100%出るわけじゃないし」
その体験をロドリゲスに話すと、ロドリゲスは「もし、望んだ子が生まれなかったらどうするんだろう?望んだ外見で生まれないことで、その子がそのままの形で受け入れられないのでは?と心配になるな。そのままな自分を親に受け入れられないことが、俺にとっては悲しいことだから。金髪で青い目の赤ちゃんもかわいいけど、オレの甥っ子もキレイな茶色な目で、どことなくオレにも似ていてすっごくかわいいよ!オレらが世話してる子もニコニコいつも笑顔ですごくかわいいよね。赤ちゃんはみんなかわいい。」と言った。
ルースはロドリゲスの言う通りだと思った。みんな違いがあるけど、それに優劣はなく、それぞれの個性が素敵で美しいと感じるのだ。