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【英語】「recommend」の悩み

ネイティブ、ノンネイティブ問わず、私の中で相手の英語力を測る一種のリトマス試験紙になっている動詞が「recommend」です。

「私はジョンにこの本を薦めます」は、

I recommend this book to John.

これはOK。

「私はこの本を読むことを薦めます」は、

I recommend reading this book.

動名詞が目的語に来ます。 

では、「私はジョンにこの本を読むことを薦めます」はどうなるでしょうか。

…。

正解は、

I recommend (that) John read this book. 

です。

そう、「read」の部分は3人称単数であっても変化しません

ちなみにここに来る動詞が「be」の場合は、「is」にも「are」にもならず、「be」をそのまま使います。

I recommend (that) this book be read by many people.

Johnはrecommendの目的語ではなく、次に来る節の主語となります。

日本語も「私はジョン『が』この本を読むことを薦める」としたほうが分かりやすいかもしれません。

そして、この節の中で使われる動詞は原形となります。

実際は原形と同じ形のように見えているだけで、文法的には「仮定法現在」と呼ばれる、れっきとした変化形です。ま、変化は目に見えないんですが。

文法用語は覚える必要がないので、こういう時は「原形」で良いんだ、と理解すればOKなのですが、「どうして原形を使うの?」と悩んでしまった方は、仮定法現在について調べてみるのをおススメします。

この「仮定法現在」、意外と目にもしますし、耳にもします。

ちなみに、イギリスでは「read」の代わりに「should read」と「should」を入れて表現することが多いようです。

I recommend (that) John should read this book. 

英語を仕事で使用するようになってから、学校英語でおなじみの「仮定法過去」だけでなく「仮定法現在」の形もよく目にするようになりました。

そしていつの日か、私はある人が「recommend」を「動名詞」か「仮定法現在」と一緒に使うのを見ると、「あ、この人の英語は信頼できる」と思うようになってしまいました。

逆に、「私はアメリカ帰りで英語はネイティブ並みです」と言っている人であっても、ここを間違えていたりすると、「この人は英語が流暢だけど参考にはしないでおこう」と判断してしまいます。

一種の「仮定法警察」みたいなやつです。面倒くさい。

では、その間違いとは?

よくあるのが、

I recommend John to read this book. 

です。

一見、「私はジョンにこの本を読むことを薦めます」を忠実に訳しており、正しいように見えます。

しかし、この場合、「to read this book」は「~するために」(「不定詞の副詞的用法」とかいうやつですね)という意味になるので、

「私はこの本を読むためにジョンを薦めます」

という意味になるのではないかな?と思います。
「この本の読み聞かせはジョンが一番上手だから、彼を推薦するね!」
ということなのでしょうか。

もちろん、ネイティブはこんなひねくれた解釈はしないでしょうけれど。

ただ、ジーニアス英和にもある通り、イギリス英語では「recommend O to do」という形も使われるようなのです。

結論、そんなに神経質になる必要はない。

ですが、

アメリカ英語のほうがイギリス英語よりも古い形を残しているので(移民の言語あるある)、アメリカ人と話すときは「動名詞」や「仮定法現在」をよく耳にすると思います(仮定法現在、何度強調するんだって感じですが)。

ちなみに、

I recommend John to read this book. 

は、私の職場のヨーロッパ人の多くが間違いだと思わずに使っています

まあ、イギリス英語的には間違いでないのであれば、欧州的にはOK?

私の考えでは、これには彼らの母語が影響していると思います。

私が判断できるのはドイツ語とフランス語だけですが、「recommend」に相当するドイツ語の「empfehlen」とフランス語「recommander」は、いずれも「不定詞」を目的語に取るからです。

Ich empfehle John, dieses Buch zu lesen. 
Je recommande à John de lire ce livre. 

なので、彼らの母語を直訳すると、

I recommend John to read this book. 

という文が自然に出来てしまうのです。

仮定法現在の悩ましいところ。

そもそもあまり習っていなかったり、習っていたとしても覚えていない人のほうが多いと思うので、3単現に「s」を付けないと違和感を覚える人が少なくないのでは?という点です。

I recommend John read this book.

と書くと、親切心から「readsじゃないの?」と言ってくる人も中にはいます。

そういう人に「いやこれは仮定法現在で…」と言っても、ただ文法知識をひけらかしている人間に見えてしまって、誠に気まずい。

なので、私は、どうしても「誰が」と言う必要があるのではない限り、

I recommend reading this book.

という風に、動名詞を使った表現を用いるようにします。
一番穏便な方法です。ジョン、ごめんね。

ネイティブの同僚も「recommend O to do」を使っているので、「ネイティブが使っているなら良いんじゃないか」と言いたくもなりますが、ネイティブとて正しい文を書いているとは限らないのです。

そして、別のネイティブの同僚は「『recommend John to do』は間違っている、『recommend John do』が正しい」と話していました。ご想像のとおり、前者がイギリス、後者がアメリカの英語ネイティブです。

神経質すぎるかもしれませんが、自分の母語ではない以上自己修正機能が働かないので、これくらい慎重でちょうど良いのかもしれません。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

【画像】Dorotheさま【Pixabay】