ドイツ語の格の順番について
【この記事のポイント】
✓ ドイツ語の格には、一つひとつに番号ではない名前がある。
✓ ドイツ語の格の順番は、ギリシャ語文法が起源。
✓ 覚えるためには順番を変えても良いが、混同に要注意。
✓ ドイツ語で格の名前を覚えると学習に役立つ。
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こんばんは。
ドイツ語には、4つの格があります。日本の独文法ではなぜかそれぞれの格に特別な名前はなく、1格、2格、3格、4格という、無機質な呼び名で呼ばれています。
一方で、本家ドイツでは、この4つにはちゃんとした名前がついています。
1格は、Nominativ ノミナティーフ (名前の格)
2格は、Genitiv ゲニティーフ (生まれの格)
3格は、Dativ ダーティフ (与える格)
4格は、Akkusative アクザティーフ (訴える格)
どれもがラテン語の文法用語をそのまま取ってきたものです。
Nominativ が「主格」(「主語」になる格)
Genitivが「属格」(「所属」や「属性」を表す格)
Dativが「与格」(「与える」相手を表す格)
Akkusativが「対格」(動作の「対象」を表す格)
というものです。
格の日本語の名前は正直、覚えても覚えなくてもどちらも良いですが、格のドイツ語での名前は丸暗記でいいので覚えておくと、ドイツに行ってからが便利です(このノートでは説明の便宜上、日本語の格の名前を引き続き使用します)。
どうやら、ドイツ人はder erste Fall(第1の格)とかいうのではなく、Nominativというのでドイツ語の文法を習っているらしいのです。ゲーテ・インスティトゥートなどの外国人向け語学講座でも普通に使われますよ。
「1格、2格、3格、4格」という名前だと、まるでその順番が不動のようなものに思えますが、実はちゃんと役割に即した名前があるのですね。
……閑話休題。
では、なぜ、この順番に並べるのは誰が決めたの?
ということですが、格の名前にラテン語を使っているところから分かるように、期限は古く、古代ローマ帝国……ではなく、なんと古代ギリシャまでさかのぼります。紀元前2世紀にトラクスというギリシャの文法家が書いたその名も「文法書」の中で、
ギリシャ語には5つの格がある。主格、属格、与格、対格、そして呼格である。
と記されているのです。
さりげなく「呼格」という見知らぬ格が出てきましたが、ドイツ語には関係ないので無視することとして(!)、ラテン語も文法を整理する際にこのギリシャ語の順番に倣ったのです。ちなみに、ラテン語の格は6つあります。
ちなみに、このトラクスさんは、他にも、「名詞」や「動詞」や「冠詞」「前置詞」といった、2000年以上経った今でも使われている「品詞」の概念を考えた人としても、とても重要です。
どうしてこの順番にしたのかは、私も勉強不足なのでこれ以上はお伝えできないのですが、この順番は必ずしも学習に適した順番ではないことは、色々な人が言ってきています。
例えばドイツ語の場合、1格と4格の活用は非常によく似ています。
これは定冠詞の格変化形ですが、男性の単数形以外は、1格と4格は同じ形を取っています。
ということは、1(主)格、2(属)格、3(与)格、4(対)格、という順番で並べるよりも、
少なくとも1格と4格は並べて書いた方が、覚えやすくはないでしょうか?
実際、こういう並べ方に並び替えて説明する人もいます。それだからこそ、「1格」「2格」という、順番が変われば意味も変わってしまうような呼び名で呼ぶのは、ちょっと危なっかしいのです。
「1格」「2格」…という名前だと、まるでこの順番は決して変わらないように感じてしまいがちですが、あくまでこの順番は人為的なもの。覚えやすいように格の順番を変えても良いのです。
ただし、順番を変えたということは頭に入れておかないと、格が頭のなかでこんがらがってしまうので、要注意です。
ここまでお読みくださいまして誠にありがとうございました!Tschüssle!
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