【ドイツ語文法】名詞の格変化(1)
さて、早速名詞の「格変化」を見ていきましょう。
前回「犬」という日本語の単語を出したので、せっかくなのでこれに対応するドイツ語を例に出しましょう。
なお、前回お話しした通り、ドイツ語には厳密には「犬」という日本語の単語にぴったり合う単語はありません。
ドイツ語の名詞は常に4つの格のどれかを持っているので、
「犬が」「犬を」「犬に」「犬の」
という単語はあるけれども、助詞のない「犬」という単語は存在しません。
日本語では「が」「を」「に」「の」という助詞を付け足すことで、文の中での名詞「犬」の役割が明確になります。
では、ドイツ語ではどうなのでしょうか?
「犬が」は、ドイツ語では「Hund」と言います。
「フント」という言葉、「ダックスフント」に隠れていますよね?
あれはドイツ語由来の言葉だったわけです。
「ダックス(Dachs)」は「アナグマ」という意味で、アナグマ狩りのお供とするために品種改良されて生まれた犬種がダックスフントです。
話が脱線しました。
「犬が」「犬を」「犬に」「犬の」の順に従い、次は「犬を」です。
「犬を」は、ドイツ語では「Hund」と言います。
……同じ形ですね。
「犬に」は、ドイツ語では「Hund」と言います。
……これも同じ形です。
なんか話と違うような…?
「犬の」は、ドイツ語では「Hundes」と言います。
または、「e」を抜いて「Hunds」と言うこともできます。
とにかく「s」が大事です。
英語でも「dog's」と「s」が入りますよね。
ドイツ語の場合は「'」が要りません。
つまり、
「犬が」「犬を」「犬に」「犬の」は、
「Hund」「Hund」「Hund」「Hundes」
というわけです。
「格変化」と聞いて身構えた方は、拍子抜けするかもしれません。
そう、実はドイツ語の名詞は、それ自体は殆ど格で変化をしないんです。
なんだそれは、と思いますよね。
これだと「Hund」だけを見ても、「犬を」なのか、「犬に」なのか、見当がつきません。
そのため、ドイツ語の名詞はどうするのかというと、他の単語の力を借りることにしたのです。
何かと言うと、名詞と行動を共にする単語です。
「冠詞」や「形容詞」という言葉です。
ドイツ語の名詞自体は奥ゆかしくてあまりハッキリと変化をしないので、
その代わりに冠詞や形容詞がしっかりと自己主張をして「格」のほどを見せつけてくれます。
特に冠詞は、文の中で単独で使うことはできず心細そうですが、
名詞にくっついた途端、一丁前に性も格も数も見せつけるようになります。
ですので、「名詞の格変化」と言っても、実際に格変化の勉強をする際に中心となるのは「冠詞」や「形容詞」の格変化です。
この点は重要ですので、ぜひ覚えておいてください。
それでは、次に具体的に「冠詞」の格変化を見ていきましょう。