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『カラスの親指』道尾秀介 レビュー

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに! 最初の直木賞ノミネート作品、第62回日本推理作家協会賞受賞作品。(講談社文庫)

講談社BOOK倶楽部ホームページより
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205688

<出版された年>

2011年

<初出>

小説現代増刊号『メフィスト』2007年9月号~2008年5月号

<主な登場人物>

武沢竹夫(タケ) 主人公

46歳。詐欺師。
口は器用だが手先の仕事はあまり得意でないタイプ。
2階建てアパートの205号室に住んでいる。
郵便受けの扉を開けることに対してトラウマを抱えている。
ある組織の報復から逃れるため”中村某”の戸籍・住民票を買い取って生活している。

入川鉄巳(テツ)

45歳。詐欺師。
武沢と出会う前は『Lock & Keyいるかわ』という名前で常習的に解錠詐欺をやっていた。
小柄。先輩の後をついて歩く中学生のような男。
イルカのような顔をしている。
工具が器用に使える。英語がちょっとできる。
死んだ妻が子どもの頃から大事にしていたプラスチック製のコップを大事にしている。

河合まひろ

茶髪の痩せた18歳の少女。スリの常習犯。
高校を卒業したばかり。卒業式には素行不良のため出席できなかった。
足立区のアパート『ドリーム足立』に居住しているが、家賃を滞納している。
差出人不明の金を定期的に受け取っている。

ヒグチ

上背のある、トカゲのような顔つきの男
前歯が短く、歯擦音が耳につく話し方をする。

中華料理屋『豚々亭』の店主

武沢のアパートの近くに店を出している。
汚れた割烹着を着ている。
太って不愛想。

上背のある男

『豚々亭』で武沢のことを根掘り葉掘り訊いていった。探偵??

中華料理屋『馬々亭』の店主

北千住駅前に店を出している。
頬がこけ、鼻の下に気取ったちょび髭をはやした男
とある小さな劇団のファン。

<内容紹介>

どんでん返しにどんでん返し、Aと思いきやBでBと思いきやCで…けれど頭の中はゴチャゴチャにならないところが味噌。ネタバレするともったいないので、導入部分(3章の途中まで)に書かれていることだけ紹介します。

主要人物の略歴

・武沢竹夫(タケ) 主人公

 昔は機械工具メーカーで真面目に営業マンをやっており、練馬区の端、  埼玉県との県境にある借家で武沢、6歳年下の妻(雪絵)、一人娘(沙代)の3人暮らしをしていた。 
 12年前、妻を肝臓がんで亡くす。享年28歳。娘はこのときまだ7歳。
父子2人暮らしをしていたが、沙代が10歳だった時、武沢はギャンブル好きの同僚に連れられて賭場に行き、成り行きで保証人になった。その後同僚は行方不明。
 武沢は消費者金融で金を借りて賭場になんとか返済するも自転車操業に陥り、様々な消費者金融を渡り歩く。更に紹介屋詐欺にまで遭ってしまい、ついにヤミ金に手を出すハメに。厳しい取り立てのせいで会社をクビになり、やがてヤミ金の下で働かされるようになる。そのときヤミ金組織のコーディネータ的な役割を果たしていたのが"ヒグチ"であった。
 武沢がヤミ金で取り立て係をやっていたとき、とある債務者の女性が自殺。彼女は母子家庭の母親だった。
  武沢は組織の書類(債務者や拠点の一覧)を盗み出し、警察へ出頭。
結果"ヒグチ"は逮捕され、組織は壊滅。
 7年前、武沢の家が火事になり沙代が焼死。武沢は組織の報復を疑う。

・入川鉄巳(テツ)

 妻(絵里)が不倫から覚せい剤中毒に陥り、挙句の果てに借金苦により首吊り自殺。
 入川は妻の借金を返済しようと債務整理屋にすがり、騙された。
 借金は結局、妻の生命保険で完済。

・河合まひろ

 父は家を出て行き、母(瑠璃絵)は借金苦で手首を切って自殺。
 父のことは居場所も顔も知らない。
 母からは父のことを「人からお金をむしり取るような悪い仕事をしている」と聞かされていた。

導入部分のあらすじ

ひょんなことから武沢のアパートに入川が転がり込んでくるのだが、そのアパートが火事になってしまう。
ヤミ金組織の連中が報復のつづきを始めたのではないかと恐れた武沢は入川と共に逃げる。
その後2人は足立区にある風呂トイレ付2階建てのオンボロ住宅に住むことになった。
そしてある日、上野にて某事件を目撃した2人は河合まひろと出会う。

<地図>

https://www.google.com/maps/d/u/1/edit?mid=185KMQseMz8NnQO31lOWhaSpl2L7KmPI&usp=sharing

<キーワード>

少し古い手口だが、簡単に騙されないために知識として知っておいた方がイィと思われる犯罪がたくさん登場するので勉強になる。

 紹介屋詐欺/戸籍売買
 債務整理屋/解錠詐欺/取り込み詐欺
 スリ/万引き
 偽銀行員詐欺/骨董品詐欺/プリペイド携帯の転売/偽の警察手帳/盗聴

もっとオベンキョしたい人は、コチラもオヌヌメ。
『騙しのカラクリ』 横田 濱夫 角川文庫
『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』 多田文明 彩図社

<レビュー>

目次の所にいきなり英語と発音記号が並んでてビビる。
もしかして本文も英語?
安心してください。日本語ですよ。(←”とにかく明るい安村”風)
ちなみに各章の名前は全部鳥の名称。意味は読み進めていく過程で分かるので、辞書は必要ない。
 
読者層としては、たぶん1970年代以前(80年代もギリギリセーフ?)に生まれた人に刺さることを想定してると思う。ラジカセとか電話番号案内とかが出てくるから。逆にインターネットやスマホは出てこないので、平成生まれの人は取っ付きにくいかも~。
 
この本が出版された翌年、映画も公開されたらすぃ。
タイトルは本と同じ『カラスの親指』で阿部寛主演。
機会があったら観るつもり~。


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