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アナザーストーリー『織姫と彦星』

<"七夕の日"に因んで外伝を書いてみた>

 牛郎は地上に住んでいる若者。身寄りがなく、持っているのはオンボロの荷車,年老いた牛,自らこしらえた藁ぶきの小さな家と畑だけ。
 織女は天上に住んでいる天女で、きれいな彩锦を織るのが得意だが、仕事として朝から晩まで織らさせられて毎日クタクタのヘトヘト。地上の生活に憧れている。

 2人は年老いた牛の導きによって出会い、地上で一緒に暮らすこととなった。2人の間には子供が2人生まれた。彼らはとても幸せそうに見えたが、実のところ織女はそれほど幸せと思っていなかった。地上で実際に2、3年生活してみて、人間界でもやはり朝から晩まで働かなければいけないということに気付いたからだ。彼女は牛郎との質素な暮らしにも馴染めなかった。おまけに地上には友達が一人も居ない。天上には天女仲間がたくさん居て一緒に冗談を言ったり愚痴をこぼしたりできたのに。織女はとうとうホームシックに罹ってしまった。

 毎晩織女は子供たちを寝かしつけた後、家族の服を繕いながら、部屋の隅に現れるネズミたちに向かって悩みを話した。
 ある日、1匹の年老いたネズミが彼女のそばにやって来て、彼女に話しかけた。「大雨の後に虹が出たら外に出て、大きな声でおばあさまの名前を呼びなさい。」彼女は年寄ネズミの言う通りに外に出て祖母を呼んだ。すると西王母が虹の上を滑って地上に降りてきた。「あんれまぁ、オマエさんはこんなところに居ったのかね。」織女は泣きながら言った。「おばあちゃんゴメンナサイ。ルール違反してこっそり人間界に来て遊んでいたら悪い人に誘拐されてしまったの。」「おお、可哀想に。よしよし大丈夫よ、一緒に帰ろうね。」「うん。」西王母と織女は一緒に飛び上がった。

 牛郎と子供たちも飛び上がって彼女たちを追いかけたが、天の川に追跡を阻まれた。織女は天上に無事帰還したが、機織りの仕事が既に廃止されてしまったことを知る。彩锦の代わりにコンピュータが自動的にランダムな模様を作り出し、空を彩るようになったのだ。

 ニートになった織女は地上での体験を面白おかしく語ることで有名になり、天寿を全うした。天上の人々は彼女の功績を称え、天の川の近くに
織女星を建造し、そこに彼女を葬った。牛郎と子供たちはいまだに天の川の手前に留まり、織女を待ち続けている。

 めでたしめでたし。

<元ネタ>

中国の小学校5年生向け国語の教科書
 《牛郎织女(一)》电子教材——老百晓在线 (lbx777.com)
 《牛郎织女(二)》电子教材——老百晓在线 (lbx777.com)


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