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元祖平壌冷麺屋note(116)

昼過ぎに、王子様がご来店。

お手拭きで靴を磨き出したので、それは困ります、と伝える。

「ええやんか、それくらい」と言って、自分は景福宮から来た「王子」なのだと宣言しながら、冷麺を注文した。

隣席のお客さんに「お姉ちゃん、芸能人の誰それに似てるって言われるやろ?」と話しかけるので、食べ終えてたお客さんは逃げるように帰ってしまった。

酒精の匂いがぷんと立つ。目が座っていた。

厨房に入ってこようとしたり、踊りましょうか?と言ってきたりするのを、「席でお座りになってお待ちください」とたしめたら、

「お兄ちゃんは、北の出身なんやね。日本人にしか見えへんわあ」

キター、と思った。「北」ではなく「来た」のほうで。

さらに、お金がないので食べた後にお金をおろしてくるわ、と話すので「先におろしてもらっても良いですか」と伝えた。

お店を出て行った王子様は、しばらくして韓国の缶ジュース6缶を手土産に戻って来て、さらに焼肉丼を追加した。

帰り際に、お釣り入らんわ、と500円をくれた。迷惑料として。

ドグラ星の第一王子は好きだけど、泥酔王子は困る。

10年前のアル中時代からタイムスリップした、泥酔した自分自身だったのかも知れないと夢想したら、とても恥ずかしくなった。



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