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おせちが消える未来、もう始まっている



「もう、おせち作るの、今年で最後にするわ」



昨年末、知人らで集まった日のこと。
昼食後に、食器を洗っていると聞こえてきた。
私は背を向けていたが、声で誰だかはわかった。
話をしていたのは、孫のいる2人の女性だ。

聞いていると、今年でおせちを作るのをやめると言った女性は、毎年おせちを作っていたが、昨年は市販のおせちを買ったようだった。
でも、子どもたちも食べないし、残ってしまったから、もう今回で最後にしようと思ったようだ。

作るのをやめる理由に納得できる。
手間がかるし、買うにしても値段が高い。
あなたも、無理して手間やお金のかかるものを、イヤイヤ食べたくないよね。

私も子どものころ、ほとんど食べなかった。
大人になってからも、自分では作ったことも、買ったこともなく、いただいたものを食べている。

友だちとも、SNS上でおせちについてやりとりした。
子どもだけではなく、旦那さんも食べない家庭もあることを知った。

理由は...
・好きな食材がない
・温かくない
・美味しくない

わからなくはない。
でも、なんだか悲しくなった。

あなたは今年、おせちを食べただろうか。
子どものころは、どうだろう。



"今年で最後にしよう"



本当にそれでいいのだろうか...。

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"おせち"といえば、昨年出会った1冊の絵本を思い出した。
毎月購入している、こどものとも。
昨年の1月号は『おせち』だった。

福音館書店 こどものとも 年中向き
1月号 『おせち』

絵本を開くと、彩り美しく、美味しそうな写真が並んでいた。
おせちに入っている食材一つ一つの意味が書かれてある。
大人の私も、恥ずかしながら知らないことばかり。勉強になった。

たまたま昨年、手元に届いた『おせち』は人気で、異例の増印、重版。
今年もハードカバー化されたが、予想以上に評判が良く、ニュースにも取り上げられるほど。更に重版となった。

おせちを食べる人は減っている。
でも、日本の文化を大切にしたい、伝えたい。
そう思う人は、少なくないのだろう。

だからといって、無理には食べたくないし、食べさせたくない。私も同じだ。
でもね、今の気持ちも大事にしたいんだよ。

・子どもが食べたいものに応えたい
・お正月らしい特別なものにしたい
・日本のおせちを伝えていきたい

大切にしたい思い。
おせち以外も、お正月のご飯として、子どもたちと楽しみながら叶えてみた。


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2024年12月31日 大晦日


私は夕方、子どもたちと年越しうどんを作った。

リクエストに応えて、

・蕎麦よりうどん
・お餅はマリオ

年越しうどんをテーブルに置くと、2人は並んでのぞき込み、ニコニコしていた。

「お顔が伸びた〜!」
「甘〜い」

白玉粉に絹ごし豆腐を入れているだけだが、甘く感じたようだ。
うれしそうに食べてくれた。

夜には、夫の実家へ。
お義母さんは、購入したおせちなどを用意して待ってくださっていた。
でも、子どもたちは、テーブルに置いていても一度も見ることなく、すぐに遊ぶ。

「どれ食べる?これ美味しいよ」
私から勧めてみた。
子どもたちは、好きなものを私が取って食べる。

選んだものは...
・お餅
・栗きんとん
・いくら
・田作り

甘いものや、私も子どものころ好きだったものばかりを食べていた。

その日の夜、寝る前。
今まで興味を持たなかった『おせち』の絵本を、娘が「読んで」と持ってきた。
私は布団の中で、2人に挟まれて読んだ。

「おせちって知ってる?」

「知ってるにきまってるよー!」

息子はそう応えた。

でも、

「これなに?これは?」

次々聞かれた。

「これ今日食べたね!」

続いて娘が言った。

ページをめくると、

「ぼく、こんにゃくも食べたい!」

家ではまだ食べたことのないこんにゃく。
給食では食べたことがあったのだろう。

絵本を見ながら、少しの間、会話が弾んだ。
おばあちゃんのお家で、おせちを見て食べて、少しは知ることができたからだろう。

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2025年1月1日 元旦


お正月、私は子どもたちに何が食べたいか聞いた。
返ってきた返事は、子どもたちが好きなママの作るメニューの「たまごチャーハン」。

それもそれで嬉しいが、



"お正月なのに"



心の中でつぶやいてしまう。


おせちを好きになってほしいとは思わない。
自分も子どものころ、食べなかったから。
でも、大人になると特別な日を楽しみたいと思ってしまう。
お椀とお箸置きだけでも、正月らしいものにした。

冬に使える箸置き

大人用は、夫がブリしゃぶを用意してくれた。

夫が捌く
今年のは脂乗りがちょうどよく、身が柔らかい

私も人参や大根の飾り切りのお手伝い。

黄人参と紫大根もあると、より彩り良かった

かわいいものが好きな息子は、たまごチャーハンを食べながら鍋に手が伸びる。
いつもなら進んで食べない人参。
飾り切りを見て、笑顔で「食べたい!」といい、自分ですくって食べていた。

娘には、ブリしゃぶを勧めてみた。
私がしゃぶしゃぶしたものを、恐る恐る口を小さく開けて1つ食べる。
すぐに笑顔で「次はこれ♪」といわれた。
お皿に乗ったブリがなくなるまで、自分でしゃぶしゃぶしながら食べていた。

4歳の娘は、ブリしゃぶにハマった



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2025年1月2日


毎年2日は、親族みんなが我が家に集まる。
今年も私の母が用意した、オードブルを囲って、みんなで食べた。

『毎日のおいしいもの まとか』

子どもたちが食べたのもは、みかん(紅まどんな)のみ。
食べたことないものには、手を出さない。
私は子どもたちに、お弁当を作った。
食べないことが予想できていたからだ。

作っていると、いつものように横からかわいい手が伸び、味見しながら待ってくれた。

できたのは、おせち風のお弁当。

中身は...
・大人のおせちで子どもたちが食べられたもの
・普段、子どもたちが食べているもの
・子どもたちが好きなもの

おせちの意味する具材や形や色は、『おせち』の絵本を参考にしてアレンジした。

子どもたちは、おせち風のお弁当ができあがると、うれしそうに走って台所に取りに来た。
あんなに大人のおせちやオードブルには、見向きもしなかったのに。

お弁当を渡すと、そーっと歩く。
椅子に座ると、急いでフタを開けた。
迷いなく次々食べる2人。
いつものママのお弁当に、安心しているようにも感じた。
息子が食べたいと言っていたこんにゃくも、口に入る。
ホッとした。

その日の夜、子どもたちはまた『おせち』の絵本を持ってきた。
再び布団に入って、私の両側に2人は座った。
夫も覗き込む。
私は絵本を読んだ。

「おせちって知ってるー?」

「知ってるにきまってるよー!」

先日と同じ反応が返ってきた。
でも、ページをめくると以前とは違っていた。

「これ、あった!」
「これも、食べた!」

知ってることが増えていた。

意味は、絵本の言葉を頼りながら伝えた。
子どもたちは真剣に聞いていた。

大人のおせちとは違う味。
でも、子どもたちが好きなものを詰めることで、興味をもってくれた。
おせちのことも、また少し知ることができた。
子どもたちにとっても、特別なお正月になった。


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子どもたちが食べないからやめる
日本の伝統だから食べる

もしかしたらあなたは、どちらかに偏っているかもしれない。

でも、あなたが大切にしたいものがあるのであれば、あなたらしく工夫することで伝えることもできる。

たとえ形が少し変わっても、思いが込められていれば、きっと子どもたちの心に残る特別な時間になる。


おせちが消える未来は、もう始まっている



あなたも感じているはずだ。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
子どもたちにとって、心に残るお正月になっていることを願います。

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