今だからできた、自分のキャリアと向き合うこと。
32歳、転勤族の妻、1歳児育児中の専業主婦であるわたしが、フリーライターを目指すことにした。
もともと生粋のテレビっ子。メディア関連の仕事に憧れ、大学は東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科に進学し、テレビ局やイベント会社でアルバイトをした。
しかし、最終的には地元である宇都宮へ戻り、金融機関に就職することを決めた。
就活におけるメディア業界の激戦を勝ち残る自信も、仕事に就いてからの激務をこなす覚悟もなく、土日休みで実家暮らしといった安定を選んだのだ。
大学卒業後、約6年半に渡って、保険会社で企業営業をしていた。
その中でも、わたしは仕事について深く考えたことがなかった。
転勤族の父と専業主婦の母のもとで育ってきたわたしにとって、「女性も働きやすい会社」「出産・育児を通しても、働き続けられる」といった言葉はほとんど響いていなかった。
長く働き続けるイメージがわかない、モデルケースが近くにいない、魅力的に感じない。
「出産・育児もしながら、男性と同じように仕事もしなきゃいけないとか地獄かよ。」とすら思っていた。
時代錯誤であることは自覚していたものの、現にわたしの周りにはそんな人も多かったように思う。
そんなわたしが、ようやく自分のキャリアプラン、自己実現について真剣に考えたのが、子どもが1歳になった今のタイミングだった。
働き方の多様化が進み、転勤族の妻でも、築けるキャリアがあるのではないかと思えたのだ。
今までのわたしにとっては、自分のキャリアよりも、結婚・出産といったことの方が優先順位が上だった。
そして今、本当に今だからこそ、飛び込めたのが、ライターの世界。
夫がいて収入面の大きな心配がなく、自己実現としてチャレンジできる今の環境に感謝したいと思う。
そんな後ろ盾なく飛び込める人たちのことはもちろん尊敬するけど、自分はそうではなかった。
高校時代からの大親友がライターになったこと、近所の保育園に空きがあったこと、相談した夫や家族が快く背中を押してくれる人たちだったこと、奇跡的な条件が重なり合い、今わたしはここにいる。
30代からのスタートになるが、不思議と「もっと早く飛び込めば良かった」といった後悔はなく、むしろ今だからできた選択だと思う。
息子が大きくなった頃、「自分の為に犠牲になっていろいろなことを諦めた母」ではなく、「自分らしく自己実現を楽しむ母」の姿を見せてあげたい。