『聲の形』と世界からの祝福
映画『聲の形』は、時に原作の展開や要素をうまく捨象しながらも、ストーリーは基本的に原作にとても忠実と言ってよい範囲に収まっている。ただし映画を見終わった後に抱く印象は、原作の出来のよいダイジェストを確認したという感覚ではなく、原作はひとまず横に置いておいて、紛れもなくよい映画を見たという手応えである。
例えば、家出をした結弦が将也の家を抜け出して通りを歩いているところに、将也が追いついてくるシーン。カエルの死骸の写真をしゃがんで撮る結弦のショットを見ていると、ふと雨粒の音が