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どうにも√16にたい【ゆるエッセイ】

√16にたい。毎日のことだ。

√16んではならない。なぜなら√16後、今より楽になる保証などどこにもないからだ。

だけど、たぶん俺の脳みそは幼稚園児くらいのときに壊れてしまっていて、もうしあわせは金輪際、感じられないようなのだ。

壊れた脳みそに鞭打って、√16んだ身体を引きずりながら軽快に踊る毎日だ。
がんばれば、脳内快楽物質は多少は出るんだろう。それで、いろんな刺激物に依存しながら命だけをどうにかつないでいる。

昔は頭の中で、知らない世界の知らない人たちが毎日、俺と全く関係のないところで話をしていた。
それに風呂場で耳をそばだてて、狭くてきたない世界に幼い身体を置き去りにして、俺もその世界に行けないかな、と様子を伺いながらオーロラを漂うのが好きだった。

ある日から、知らない人たちは会話をやめてしまった。俺がおとなになったからだろう。知らない人たちの会話を書き留めて、お金を得る道具にしてしまったからだろう。
もう俺の中には誰もいない。

本当は居る。だけど、俺が見ているうちはじょうずに隠れている。それでも俺は彼らに、たすけて、と泣く。返事はない。

たすけて、たすけて、と繰り返すうちに、感情がついてこなくなった。
俺は言葉の意味も分からず、たすけて、と呟くだけの藁束になった。

どうして、と今でも思う。
どうして、彼らは俺と違う世界にいるんだろう。
俺のこと、本当は気づいているはずなのに。いや、それは彼らの世界の『ルール』なんだろうな。

でもさ、たいくつだよ。
一人は寂しい。寂しい、と言いながら、もう「寂しい」の意味も分からなくなった。

まだ「たいくつ」の意味だけは分かる。

頼むから、俺をたいくつにさせないでよ。
たいくつだと、√16にたくなるから。

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