ep45 村境ルート探索#7 (北山川を越える村境 その①)
2024年3月20日(水曜日) 祝日。天気予報は春の嵐で大荒れになる予報でしたが、南方で標高低い場所は夕方以降に雨、雪予報でした。
元々山に行く予定を立てていたので、どうしようか迷っていたのですが、山友のジュンテンさんから「雨大丈夫そうだし、明日十津川村に行きます?」との連絡で山行き決定となりました。
今回の目的地は村境ルートの中でも番外編となります。ここの村境は、辺境中の辺境で、なぜそこに村境を作った?と思う程辺鄙な場所なのです。何故なら十津川村竹筒の対岸にある村境である為、竹筒集落から辿るには北山川を渡る必要があります。渡し船で対岸に渡る、、、そんな事は出来ません。ただ、村境マニアとしては一見しておきたかった所ですし、魅力的な場所なので、以前から訪れる計画を立てていました。
陸の孤島、百夜月(モモヨヅキ)
メインは村境の探索でしたが、以前に竹筒で紹介した百夜月と言う場所に訪れてみたいと思っていました。
詳しくはこちら⇨ep22 竹筒その②
この場所は伝説も残り、『陸路では行くことが不可能。船でしか渡れない場所』として広く紹介されています。対岸からは目と鼻の先。しかし北山川が行く手を阻みます。地図を見ると山越えで行けそうだと思いました。距離も短く、比較的簡単そうだったのでルートを作成していました。
周辺は和歌山、三重、奈良県の三県境がある場所です。更に、北山村は和歌山県の飛地である為、地図を頭に叩き込まないと今自分が何県にいるのか混乱する場所でもあります。
百夜月は三重県に位置し、十津川村ではありませんが、河原を数百メートル上流に歩くと十津川村に入ります。また、正面の北山川に村境が走るので、対岸は十津川村となります。少し下流に行くと、その対岸は和歌山県熊野川町となります。
文章ではややこしいので、地図を見て頂くのが分かりやすいと思います。
百夜月までのルート
まず、アクセスは和歌山県新宮市熊野川町日足(ひたり)より三和大橋を三重県熊野市紀和町側に渡ります。そのまま熊野川上流方面に進むと、北山川との合流地点に出ます。この辺りは綺麗な芝生のキャンプ場が広がります。小船梅林と言われる梅の名所でもあります。更に道を進み、紀和町花井(ケイ)集落に続く方面へ車を走らせます。集落手前の峠から、尾根道を目指す為に車をデポしました。
三重県紀和町にある百夜月ですが、陸路(車道)が存在しないのには理由があります。
道路を作る時点で住民が少なかった事や、地形的に道を作る事が困難であった事などが挙げられます。確かに、花井から百夜月まで直線的に道を作るとなると、巨大な一枚岩の絶壁を掘り進む必要がありそうです。歩道を作ったところで、上からの不意な落石を考えると利用したくありません。陸路が無い、船でしか行く事が出来ない。正に陸の孤島という事になります。
実際のルートは、百夜月の裏山相当する村境の稜線を進みます。入り口付近からシダが繁茂し、藪漕ぎが予想されましたが、稜線上は消えます。(後半はこのシダに苦労します)村の中でも最南端に位置する場所で、山は比較的なだらかですが、実際に歩いてみると巨岩がひしめく場所も有り、荒々しさが目立ちます。特に十津川側は北山川の侵食により切り立っている様です。
花井の裏山に相当する辺りはその荒々しい岩場で、テレビの共同アンテナであっただろう人工物が散乱しています。その先は踏み跡もしっかりした歩きやすい場所もあり、植林山があるので途中まではテープが道案内をしてくれます。
北山川へ下るルート
稜線の途中に石畳であった様な場所も有り、かつては山越えルートもあったのであろうと想像されました。ただ、風化により道跡がはっきりせず、北山川へ下り始める場所を比較的等高線の広い場所に設定していました。その近くに不自然に掘れた溝の様な場所があったので、おそらく先人が作った道跡であろうと下ってみました。
ガレと獣道が混在して少々荒れていましたが、水道用のホースを見つけたので辿って行くと棚田の様な石垣群が現れました。百夜月の北側に辿り着いたと思われます。
百夜月の家屋
驚いたのが、その石垣の規模です。対岸から見た時は百夜月にある芝生と家屋しか見えませんが、杉林の中には多くの田畑や屋敷跡であろう石垣で作られた土地が点在します。元々お寺があったであろう場所には小さなお堂(紅梅寺跡)と庚申さんに見える石像、一段上にはお墓であろう宝篋印塔(400年以上前?)が残ります。森に埋もれた廃屋は一軒確認出来、最近まで人が住んでいた形跡が残っていました。
対岸から見える芝生と家屋は現在も出身者の方が管理されています。今回は川向に船が係留されており留守でした。家屋の周辺は丁寧に石垣が組まれていて芸術的です。現在も電気も通じており、生活するには船を使わなければならないと言うことを除けば何不自由無さそうです。逆に誰も来ないのんびりした空間が羨ましいと思う程でした。家屋下に広がる芝生の広場はサッカーのグラウンド程広く、美しく手入れが行き届いていました。当時の子供達が走り回って遊ぶ幻影が脳裏に浮かびました。
この地はかつて、菖蒲や蓮子の花々で観光客が訪れ賑わった事もあったそうです。北山川を挟んで九重集落が見え、国道311号を頻繁に走る車の音が良く聞こえました。
続いては村境を辿って戻ります。後半は大変でした。続きはエピソード46にて。
動画編集中
○メンバー【YTTケンちゃん ジュンテンさん】