あきの小窓
開かれない小窓
朝が九月を遠くへ運んでいく
風が
葉の音はせず、ただこぢんまりとした
太陽光は夏よりも穏やかで
芽吹く春とは違う空気
煙が上がっている
空になびいた後の雲が
背筋を伸ばして
風をカーテンに通そうとする
窓を開ける
開かれない小窓
針はただ回転を続ける
家の周りはこんなにあかかったかしら
風はいつまでたっても記憶をはっきりと
思い出させてはくれないが
曖昧な感覚を引き出しては片付けてしまう
鼻から吸った空気は
何かいつも私が追いかけている間に
掴めなかったものを輪郭だけ
背を向けて
再び掴めなかった
開かれた小窓
髪の間をすり抜ける
秋のかっこいい風
何も残さないのに
再び出会うと
必ず秋だねとわかる
風が
ひとりで走る瞬間に
周りに見えない何かが
開かれる
時には。