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掌編小説 ミニトマト ショートショート 文芸
朝。ぼくはベッドから起き上がると、録画しておいた世界を旅する番組を見ながら、ルーティンのストレッチ体操を始める。 首を回し、次に肩を回し、腰を回す。そして、胸筋を広げ、左右に動く有酸素運動。これで、耳に溜まっていたリンパ液が流れる。
ぼくは、リンバが溜まりやすい。梅雨の季節は、特にめまいや偏頭痛が酷かった。
ストレッチと有酸素運動を始めてからは、ずいぶん体調も良くなった。
ぼくは、麦わ
掌編小説「ロシアンティー」 ショートショート 文芸 3分ショート
むかし、むかしの記憶。昭和の記憶。
おかあさんは、わたしによく、ロシアンティーを入れてくれた。
午後3時、おやつの時間。
トースターで焼いた手作りクッキー。動物や花のかたちにくり抜いた、ほんのり茶色。
おかあさんが座卓の上に、ガラスの容器に出してくれた。
角が少し焦げてたりしたけど、口に入れるとほんのり甘く、カリッとしてるのやしなっとしてしているのがあったり、おいしかった。
おかあさ
掌編小説「キャラメル」 3分 ショートショート
僕は迷ったときには、難しい方を選んで生きてきた。勉強は苦手だったけど、その分、直感には優れていたんだと思う。 仕事で、誰もがやりたがらないようなことでも、なんだかできそうな気がして、手を挙げた。
他人の冷ややかな目を感じながら、よく考えた。考えてる時には、頭がくらくらしてくる。
そんなときには、黄色箱のキャラメルを口に放り込む。なんとも言えない、甘さが口に広がる。箱のエンゼルが微笑む。
キ
掌編小説「フレンチとーすと」 3分 #ショートショート #文芸
「おはよー、いつも早いね」彼女が起きてきた。彼女は、日曜日の朝が遅い。僕は、彼女が洗面台に行っている間に、キッチンに向かう。 フライパンを火にかける。
冷蔵庫から、バターとタッパーを取り出す。
バターのアルミホイルを開けると、切り分けておいた、一カケラをフライパンにそうっと、入れる。
熱せられたフライパンに、バターがじわりと溶けていく。バターのいい香りが鼻の中に広がっていく。
フライパン
掌編小説「角砂糖ってすごいんだから」 #ショートショート #文芸
「最近、角砂糖って見ないよね。カフェではさあ、スティックシュガーだし、角砂糖なんかおいてないよね。昭和レトロの喫茶店なんかに置いてあんのかなあ。でも、まあ、置いてあっても角砂糖なんか使わないよね」 タカシだとかいうこの男の話はつまんない。この男とは、マッチングアプリでマッチングして、このカフェに入ったばかりだ。
男は最近、流行りのマッシュで、細身の黒のジャケットに、グレーのスラックス、皮のパン
右手首が最近、痛い。腱鞘炎かも。とりあえず、アンメルツヨコヨコ塗ってます。
掌編小説「糖分が足りてません。」 ショートショート 文芸
私は朝から忙しい。昨日、課長にお願いしていた原稿ができていなかった。課長にあさイチで、「課長、すいませーん。昨日お願いした原稿できていますか?」と尋ねる。
課長は、スポーツ新聞を見ながら、返事もしない。
すっとぼけてやがんな、どうせ、忘れてたんだろと思いながら、一呼吸おいて、 「課長、すいませーん。昨日お願いした原稿できていますかー!」
と少し、大き目の声で言ってみる。隣の席の原田くんが、
掌編小説 いつもハッピーエンド 「会いたいよ」 ショートショート 文芸
ああ、なんであんなこと言っちゃったんだろ。ソラ、怒ってるかな。
昨日のこと、何度も、思いだしてしまう。放課後、がらんとした教室で、部活終わりに、ソラと机の上に座って喋っていた。
教室は、夕陽が差し込み、ソラのショートカットをオレンジ色に変えていた。風がカーテンを揺らし、心地よ風が私たちを吹き抜ける。
ソラは、ケントの話ばかりしていた。ケントが髪型を変えてかっこいい。ケントの服のセンスがいい
掌編小説 いつもハッピーエンド「雨」 ショートショート 文芸
雨の日は嫌いじゃない。外に出たら服は濡れるし、靴に雨が入って靴下はグチョグチョ。だけど、雨の日は何だかテンションがあがる。
傘をさすと、雨粒がバチ、パチと当たる。家を出る時、いつも、迷う。好きな傘が多すぎるんだ。黒地に白の水玉。黄色のスヌーピーだって可愛い。ラメの入った透明傘は、傘越しに空を見上げると、虹がかかったみたい。
今日は、ラメ入りの透明傘にしよう。
家から駅までは、歩いて15分、
掌編小説 いつもハッピーエンド「お母さん」 ショートショート 文芸
わたしが産まれたのは、田舎の病院だった。もちろん、産まれた時の記憶があるわけじゃない。
施設を出る時、職員さんが教えてくれた。わたしを産んだお母さんはわたしを病院で産んで、次の日にはいなくなっていたそうだ。
病院には嘘の住所のアパートと名前を伝えていたらしい。
施設に預けられ、ある時、職員さんはかなり遠方まで嘘の住所のアパートに訪ねてくれた。
家族に連絡しようとしたら、大家さんにそん
掌編小説 たばこの始末は。 星新一風ショートショート ブラック
ある国では、たばこは健康を害するものとして大統領により禁止された。
ある喫煙所で、男たちがたばこを吸いながら、ぐだぐだ話しをしている。
「たばこを吸うのも肩身が狭くなたなあ」
「家でも、妻や娘に嫌な顔をされるし、ベランダで吸うと、隣人から苦情がくるし、困ったよ」
「昔はどこでも吸えたもんだよ。電車でも映画館でも」
「たばこも、随分、高くなったし、たばこはもう高級品だよ。たばこの値
掌編小説 スペアみんと SF ショートショート 文芸
「この星には、何もないんだよ。何も」
ジローハチローが言ったことの意味は分からなかった。
僕は今はわかる。僕たちが必要とされていると。
ぼくは、この星に生まれたのは、今から3年前のことだ。ぼくは隣のジローハチローとすぐに仲良しになった。
ハチローは、僕より半年も早く生まれて運動も得意だった。
ぼくは、まわりの誰よりもハチローとたくさんおしゃべりをした。
食事の時も僕はハチローと一緒