見出し画像

再発防止、信頼回復

「再発防止に努めます。」「信頼回復に努めていきます。」
これらは、組織や企業で不祥事が起きると、責任者が記者会見で発言するフレーズです。

確かに、不祥事が発生すると、少なからずの人々に迷惑をかけているので、再発させてはいけません。
もし再発するようなら、完全に信頼を失う結果となって、再起不能になりかねない状況に陥ることすらあるでしょう。

しかし、再発を防止するには、かなりの道のりがあります。
再発防止とは、「二度と発生させない」ことですね。
このまま放置してはいけないので、「何らかの変化・変更」が必要です。
悪い状態に再び陥る危険性のある「ルール上の欠陥」を正すこと、これを「是正」といいます。

「是正」とは、当面の綻(ほころ)びを単に「修正」することではありません。少なくとも「同じ原因では二度と発生しない・させない」のであれば、次のプロセスが必要です。
①これまでの仕事のやり方の中のどこに(不祥事発生の)「真の原因」があったのかを「すべて」発見(究明)すること
②発見(究明)した「真の原因」をすべて除去するための「対策」を発明すること
③発明した「対策」を実現させること
この一連の3ステップは、問題解決の常套(じょうとう)手段です。
また、これは、「信頼を裏切った」ときの「責任をとる」ための枠組みでもあります。

「信頼回復」において、信頼するのは相手方ですから、「是正」対策は不可欠です。
なぜなら、「原因はこれらでした。それらの原因はすべて除去しましたので、同じ原因では二度と発生しません」という説明を聞いた後に、初めて相手方が「それなら二度と発生しないね」と納得するのですから。

これまでの仕事のやり方やルールなどを何も変えずに、納得に導くことはできるはずがありません。
「これまで」と「今後」、「過去」と「未来」を切り分けてこそ、「不祥事という過去」と「未来の新たな信頼」が、矛盾なくつながるのです。

それでは、不祥事を引き起こしたとき、あるいは引き起こす前に、予め準備しておくべき「是正と予防のステップ」を下記します。

① 「我が社は悪事・違法行為をしない」という組織としての宣言、構成員への伝達(経営者の言葉で宣言するべきでしょう。)

② 「何が悪事・違法行為にあたるのか」という認識(実例を挙げて善悪を区別しておく。)

③ 「悪事・違法行為をしない」ための日常業務における個別ルールの整備(軽視・無視せずに、正しいルールの整備をする。)

④ 「新たに整備した正しいルール」の周知(新しい正しいルールを全員が認識する。)

⑤ 「正しい新ルールを順守するための仕掛け・信賞必罰」の仕組みの整備(正しいルールを破らせない、守ろうと思わせる。)

⑥ 正しい新ルールに関連した「実態」の監視・測定(守られていることを日常的にチェックするためのデータを取得する。)

⑦ 実態(データ)と正しい新ルールとを照合して「順守を確認する」責任者の指名(実行者をチェックする責任者を別に指名する。)

⑧ 「ルール違反状態」の発見方法の取り決め(チェックポイントや指標の決定、判定方法、責任者など)

⑨ 発見した「ルール違反状態」への対応方法の取り決め(ダメな状態になったと想定して、予め初動対応を決めておく。)

⑩ 再発防止の対応(原因究明⇒対策立案⇒実行)の実施(前述の「是正」の3ステップ)

⑪ 「危なっかしい箇所・時点」の特定方法の取り決めと予防対策の実施(これは、又の機会に書きます。)

⑬ 一連の再発防止策(プロセスおよび結果)に関する諸情報のトップからの提供・公表(ここに至ってようやく「納得責任」を果たすことができる水準に到達します。)

しかるに、「その場をなんとか切り抜ける」「表面を取り繕う」「(関係者の)忘却を待つ」といった姿勢が、よく見られます。
もちろん、これらは論外であり、無責任の誹(そし)りを免れません。
また、「お祈り」や「気合い」や「精神論」は、当然、是正とはいえません。
人間は弱いですからね。このような悪い事例が多く見られます。

それだけに、予め上記のような準備しておかないと、いざという時に狼狽(うろた)えます。
弱い人間が狼狽えるとろくなことがありません。
さらに信頼を失うこととなり、こうした姿勢を続ければ、その組織(あるいは責任者、経営陣)の命運は「終わりの始まり」といっていいでしょう。

リスク管理、リスクマネジメントといった分野も、このように「相手方からの信頼」を主役と位置づけて考えていくと分かりやすいですし、中途半端になる恐れが少なくなるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?