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【映画評】ピーター・ボグダノヴィッチ監督『ブロンドと棺の謎』(The Cat’s Meow, 2001)

 デイヴィッド・フィンチャーの『マンク Mank』(2020)を観たのをきっかけに、ウィリアム・ランドルフ・ハースト、オーソン・ウェルズ絡みの映画を集め始める。『ブロンドと柩の謎』もそのうちの一本。原題は The Cat's Meow で、これは「猫の鳴き声」だけでなく、「最高の物・人、クールあるいはスタイリッシュな物・人」のことを言う。この映画の場合、男たちを船上で振り回すマリオン・デイヴィスを猫に見立てつつ、ということだろう。
 1924年、新聞王ハーストが愛人マリオンと共にチャップリン、西部劇製作者トーマス・インスらを自らが所有する豪華クルーズ船オネイダ号上でのパーティーに招待する。そこに生じた「人死に」に、果たしてハーストは関与していたのか否か。
 実際の事件をもとにした参加者の一人による回想形式の作品で、マリオン・デイヴィスをキルスティン・ダンストが演じている。全体的にコメディ(喜劇)調で、後半は若干サスペンス調に。ハーストは『マンク』の彼とは全く異なる、喜怒哀楽の激しい俗物として描かれる。豪華船を中世の詩に出てくる「愚か者の船」(ヒエロニムス・ボッスの絵で有名)に喩えている感がある。

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