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【映画評】ウィリアム・キャッスル監督『地獄へつゞく部屋』(House on Haunted Hill, 1959)

 幽霊屋敷ものに典型的な立地、丘の上に建つ館は、しかしフランク・ロイド・ライトのエニス・ハウス(1924)のマヤ風の外観を借りている(上図参照)――ゴシック風内部は別撮りである。幽霊は全く出て来ず、全てギミックだったという実にキャッスル的なオチの付くメタ映画だ。
 幽霊屋敷映画の建物は、この頃から中世の城を模倣する(即ち19世紀、ヴィクトリア朝下の英国風である)ことをやめて、米国的近代建築を志向する。その過程にあるのが本作のエニス・ハウスであり、『サイコ』(1960)のゴシック風の家とベイツ・モーテルであり、『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)のダコタ・アパートメント(1880-84)だ。
 ところで、故・瀬戸川猛資が本作を含めたヴィンセント・プライスの外面的(非スタニスラフスキイ的)演技をして①すべて見栄を切っている/②大げさでクサイ/③バカみたいでもある、と書いているのには大笑いしたものだ。とはいえ『地獄〜』のプライスの演技は実はそれほどまでにはクサくなく、富豪の傲慢と孤独をよく体現している。

〈参考文献〉瀬戸川猛資『夢想の研究―活字と映像の想像力』、創元ライブラリ文庫 、1999年。

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