天狐・空狐と尻尾の数

天狐と空狐の尾の数について

「九尾の狐がさらに格を高めると尾が減っていき、四尾の天狐となり、さらに格を高めて空狐となると無尾となる」というインターネット上の説について

最初見た時
「あのー、すみません。確かゲゲゲの鬼太郎では天狐がトップで空狐がその次だったはずでは?」
と首をひねりました。

 一次出典不明で格が高まると尾が減る理由も、尾が四本、尾が零本というのに何の意味が込められているかも全く説明されていません。
 また、これについて空狐が天狐よりも格が上だとか、九尾の狐が実は格が低いだとか首をかしげたくなるような説も付随してましたが(今もなお、九尾の狐を祀っている神社多いんですけど……。格が低くて大したことない存在をわざわざ祀る意味はないのでは……)

 にもかかわらず、未だに信じている人が多いようですが、もしや私が知らないだけで出典は調べれば分かるのか?と思い調べてみました。

「日本人ときつね 怪異・きつね百物語」の15ページに、天狐についての記述あり。
『天狐神、仙狐神、空狐神、地狐神、阿紫霊の神五ツで、これを五社の神という』(「志賀随応神書」「兎園小説拾遺」より)
『皆川淇園の「有斐斎箚記」では天狐、空狐、気狐、野狐の四ランクである。朝川善庵が嘉永三年にまとめた「善庵随筆」でもこの説を用いている』尾の数について記述は無し。
また、16ページには、空狐についての記述あり。
『千年を超える狐は仙狐神になり、三千年を過ぎて身体という形を脱けて自然の中に融けこめば稲成空狐神と言われるようになる』
(「志賀随応神書」「兎園小説拾遺」より)
尾の数についての記述無し。『空狐は気狐の倍以上の能力を持つ』と書かれているが、天狐より格が上で最上位という記述は一切なし。
またネット上で見かける「3000年生きた狐が空狐になるとされる」という記述も一切無し。

20ページには
『空狐などどいうものは霊魂のみあって、気狐の倍の力を持つ。天狐となるとほとんど神的存在である』
と記載あり。
34ページの記述。(朝川善庵の「善庵随筆」の内容)
『皆川淇園が「有斐斎箚記」という書を書いたのでそれを見るとその中に「野狐が最下位で、その上が気狐、さらに上が空狐、一番上が天狐である。気狐以上は人の目に見えない。空狐は気狐の倍以上の霊能力があり天狐に至っては神と同じ存在である」

天狐がトップで空狐がそれよりランクが下というのは一貫しているようです。
ネット上で見かける「天狐、空狐は神格化した九尾の狐より上のランクの妖狐」という記述も一切無し。

30ページには、九尾の狐についての記述あり。
『脊椎動物の尾は脊椎の延長線上にあるから、尾のあるものは一本であることが「原則」である。それが二本あれば特別な能力があると見、その妖怪的想像から妖しい能力を持つと考える。【略】ましてそれが九尾もあるのだから貴重神聖視する半面に特別に妖怪視する。昔の思想では九は最高の数であるから、最高の能力を持つものとして作られたのが九尾の狐であるかが、悪い面で展開したのが『三国妖婦(狐)伝』の狐である。』

格が低いとか、九尾から尾が減るという記述はやはり一切なし。

続く

参考文献
「日本人ときつね 怪異・きつね百物語」 編著者 :笹間良彦 雄山閣


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