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龍神との約束


                約2200字


あれから8年

僕は高校生になった 僕の夢は父さんのような患者さんと向き合える医者になること

ここ最近 頻繁に小さな地震が起きている

だからなのか 父さんが僕に

「りゅう いつ何が起きても動揺しないことだ 1人でも多くの人を救える医者になりなさい でもな 医者にも限界がある だから少しでも多くの事を経験して その時のために学ぶんだ」

そう何度も話すんだ

そして父さんは子供の頃の話も聞かせてくれる

あの丘に祀られてる龍神の話を

僕も小学生の時に 一度龍神に助けられた 

その事は父さんも覚えてた

でも あれからあの丘へは行っていない 

成長するごとに 足が遠のいてしまった

だけど

あの丘を見るたびに 龍神の事を思い出す

ある日僕は ふとあの丘へ行きたくなった 何故か龍神に会いたくなった

会えるかどうかは 分からないけど

僕は思いきって 行くことにした


「何も変わってないな この景色」

しばらく丘の上から街を眺めていた



「久しぶりだな」

「わ! いつからそこに?」

「ハッハッハ 久しぶりに会ったのにそれだけか? わたしは気配を消せるからな ずっとお前の後ろにいた」

そこにはあの時と変わらない 透き通るほど青く美しい龍神がいた 僕はとても懐かしい気持ちになった

「お久しぶりです龍神様 僕は17歳になりました」

「大きくなったな りゅう」

「龍神様 ここのところ小さな地震が増えてます 何かあるのでしょうか?」

「ん そう案ずるでない」

「もし もしも大きな地震が来たら?」

「りゅう 自然に逆らう事は出来ない だがあまり不安に思うな 不安が不安を呼ぶ」

「そうですね 龍神様 僕父さんのような医者を目指してるんです」

「ほう!それはよい お前ならなれる 父親と同じ目をしておるからな」

「はい! だから」



「りゅう 動くな!」

「え?な、何?」

僕はまだ これから起きる事が分からなかった

「来るぞ! いいかりゅう 私が戻って来るまで 絶対にここから動くな!!」

そう言うと 龍神は 一気に空へ駆け上った

龍神の顔はとても険しく 一点を見つめ 何かを察知してるようだった

そう思った瞬間

ドーン!!

という音とともに

突き上げられるような地響き

地震だ! ひどく揺れる 僕はその場にしゃがみ込んだ

「龍神様!!」


僕は 龍神が向かった池の方を見た

龍神は何度も何度も 山の斜面に体を打ちつけていた
山の大きな岩が音を立てて次々と崩れ落ちていった

この池はとても大きく 決壊したら僕たちの街はあっという間に 浸水してしまう

「りゅう! 聞こえるか! 慌てるな! 池が決壊しても街が沈まぬよう 流れを変えておる! わたしが戻るまでそこにいるんだ! よいな!」

龍神は池の決壊を防ぐと 勢いよく街の方へ向かった 瓦礫を吹き飛ばし 人々が安全に逃げれるよう道を開け 川の水が人を飲み込もうとすれば 体を張って食い止めた 濁流とともに 瓦礫や大木が 容赦なく龍神を襲う

「父さん!!」


丘の上からでも 父さんだと分かった

龍神が街の人を背中に乗せ 父さんのもとへ そして父さんは手当のできる安全な場所へ みんなを誘導していた

父さんと龍神の間には とても深い絆が見えた




どのくらい時間が経っただろうか

辺りが 静かになった

「りゅう!!無事か!」

りゅ、、龍神様!!

僕は 龍神の姿を見て 声が出なかった

首から右脇腹にかけて 傷口がぱっくりと開き 血が噴き出ていた

「龍神様! 血、血が!!止めなきゃ!」

「騒ぐでない わたしならこのくらいの傷 なんてことはない」

「動かないで! 動けば動くほど血が噴き出てしまう!」

「大丈夫だ わたしは昔一度死んだ身 お前が今見ているのは現実とはかけ離れたもの 気にすることはない 寝ればじき治る」

「寝て治る傷じゃ、、」

「なぁに ほんの50年ほど眠るだけだ」

「ご、50年!!」


「驚くほどのことではない 人間の世界の50年と わたしがいる世界の50年では時の流れの速さが違う 人間の時で言えば 10日あまりだ」

「10日!! 龍神様ってやっぱり神様なんだ」

「フッ たわけ」

「でも龍神様 街の人に姿を見られたんじゃ、、」

「いや わたしの姿は何故かは分からぬが お前と お前の父親にしか見えてはおらぬようだ 仮にわたしの姿が見えたとしても その気憶は消される これ以上酷い事にならぬよう手は尽くした お前の父親にも感謝する」

「龍神様 ありがとうございます!」

「りゅう 父親の姿をよく見ておけ 本当に立派な医者になった よいかりゅう 不安というものは誰もが抱くもの だがな 不安を抱き続ければ 負は負を引き寄せる お互いがお互いを思い 助け合う心を持つのだ わたしは疲れた 少し眠らせてもらう 倒木をどけて 道を開けておいた 気をつけて帰るのだぞ」

そういうと 龍神は金色の光に包まれ 空へと昇っていった

「龍神様 僕は必ず父さんのような医者になります」

僕は龍神に向かって深く頭を下げ その場を後にした

翌朝ニュースを見た

「ご覧ください! 昨日の地震で山の岩が崩れ落ち あの大きな池の水が街に流れ込むことを防げたもようです そして この瓦礫の山も人が通れるほどに道ができ避難する事ができたようです これらのことから 今回の地震の被害が最小限に抑えられたものと思われます」

その後も龍神の事は一度も取り上げられる事はなかった

        おしまい


長文を最後まで読んで下さり、ありがとうございました😌
リクエスト頂き久しぶりに龍神のお話を書いてみました。
相変わらず語彙力のなさを痛感しております😓

りゅうと龍神の出会いのお話しです

マガジンにまとめてます

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