「誰もなし得なかった新しいマーケットを切り開いた」中古車業界を知り尽くしたプロだから生み出せた半分IT、半分職人業のプロダクト
一律3.5万円の固定手数料という圧倒的な低価格で中古車フリマサービス「カババ」を展開するアラカン。最大の優位性は「前職の経験から、中古車売買の特性を深く理解していること」と話すのは社長の田中です。
この記事では、これまでの障壁とその障壁をどのように乗り越えたのか、市場の可能性、競合他社と比べた独自性や優位性など、アラカンの事業について紹介しています。
田中社長が考える、事業の過去、現在、未来を深掘りしましょう。
オンラインサービスだからこそ、顧客満足度にこだわる
ーカババは現在急成長中ですが、PMFまでにどのような難しさや障壁がありましたか?また、それをどう乗り越えたか教えてください。
基本的にはユーザーのインサイトを捉えたプロダクトとして順調な成長をしてきましたが、その途中で大きくは2つ困難なタイミングがあったなと記憶しています。
1つは、自分の車を売りたい人の集客に関わるマーケティング面で障壁がありました。
最初は順調にユーザー数が伸びたものの、マーケティングコストを上げてもユーザー数増加が比例しないというタイミングがありました。
当時はデジタルマーケティングは外部委託しており、即時性のある対応ができておりませんでした。そこでデジタルマーケティングを内製化し、顧客の反応にすぐに対応できる体制を構築することで集客を伸ばすことができました。
しかしマーケティングの専門家なしではそれにも限界があり、再びユーザー数の上げどまりが来たため、現在はデジタルマーケティングのプロフェッショナルを外部からCMOとして招きました。今後も会社としても投資をして力を入れていく予定です。
もう1つが、車を売りたい人と買いたい人のマッチングの比率の低下です。
こちらも最初は順調に伸びましたが、一定のところで停滞し下降するようなタイミングがありました。
我々のビジネスモデルは、車を売りたい人と買いたい人がマッチングして初めて成立するので、マッチング率が下がることは致命的です。
ユーザーアンケートやヒアリングなどの結果、マッチング率が低下した原因は車選びの際のサイトの反応速度の遅さにあることが明らかになりました。
そこで、サイトスピードの改善にフォーカスし、エンジニアチームと相談して対策を行ない、3ヶ月ほどで改善に成功。
それに伴い、マッチング率の回復にも成功しました。
ーPMFまでを振り返って、特に重視した点を教えてください。
特に、顧客満足度にはこだわっており、Webのみに完結しないアナログなフォローも含めたサービス体制を構築しています。
顧客満足度が重要な理由は、中古車販売のWebサービスは、リアル店舗のあるサービスよりも顧客満足が求められると考えているからです。
Webサービスは、店舗で車を見れるわけではありませんから、利用するかどうかを決めるうえで、Web上の口コミが極めて重要です。口コミの良し悪しはもちろん顧客満足度に依存しますね。
顧客満足度を高めるために、マッチングに伴うトラブルが発生した場合、カババが責任を持って出品者・購入者の双方に状況確認、事実確認を行って対応をしています。お客様にはプロとしての提案を行ない、円満な解決に導くことを徹底していますね。
直接会うことのできないインターネット上でのサービスだからこそ、我々は人の力でアナログ的にフォローしています。
ユーザーの声に真摯に向きあうということが、全ての業務の根底にあるポイントです。
中古車売買で発生する問題のほぼ全てを経験した
ー他社と比較して、サービスの独自性や優位性を教えてください。
中古車売買を深く理解して、半分IT・半分職人業という複雑なビジネスモデルのサービスを本気で実現できている点が独自性であり、優位性だと考えています。
ポイントの一つは、「本気で」という部分で、すでに多くの中古車販売店が中古車フリマサービスを展開していますが、既存の中古車対面販売の事業をメインとしてサブの扱いに留まっています。それは、現在の対面中古車販売の方が儲かるから、そして中古車フリマを伸ばすことが、対面中古車販売の売上を落とすことに繋がるからです。
中古車のフリマサービスは、既存のビジネスモデルを捨てる覚悟がない限り本気でできないサービスなのです。
またもう一つのポイントとしては、中古車フリマ事業には、ITと中古車販売の技術の両方を兼ね備えた企業しか参入できないことにあります。中古車フリマを行えるほどの中古車販売のノウハウ、そしてIT投資が行えている企業は、弊社の他にないということです。
中古車の取引を安全に成立させるには、車のメカニックとしての知識が必要なため純粋なIT企業では弊社のマネをすることはできません。
そして、中古車取引では、車の単価の高さから、詐欺トラブルも多く発生します。中古車フリマ市場に参入した企業が、重大なクレームや大きな損失を生んで事業を存続できなかったケースを多く見てきました。
運営企業が詐欺に合わないために、何をどうチェックすべきかを知っている必要がありますが、これはノウハウがどこにも公開されていないため、中古車販売店を大規模で経営した経験がある企業でしか対応できないのです。
私は、前職で役員として会社を大きくする中で、中古車売買で発生する問題のほぼ全てを経験し、その都度再発しないオペレーションを組み直すことによって会社を大きくしてきました。このような経験は、大きな中古車販売会社の役員クラスでほぼ全権を委任された人でないと経験できません。
この経験がなければ、中古車を完全オンラインで、安全に取引を成立させるビジネスを0から作るのは難しいのです。
ーその他にサービスの特徴があれば教えてください。
多くのフリマサービスでは、売上金額の一定割合を手数料として徴収することが一般的ですが、カババでは一律3.5万円の固定手数料を設定しています。
従って、全般的に低価格の商品が多かった状況の中、我々は一定以上の価値がある車を、フルオンラインで実現しました。それにより、取り扱い車両の流通量が増加し、購入者側は価格が高い車も含め、より多くの車から選択できるようになります。
実際に、既存のオンラインサービスで流通する車の大半は50万円以下の安いものだったのに対し、弊社の取引は平均で300万円を超えています。
どの会社でも成し得なかった、オンラインマーケットの新たな市場を切り開きつつありますね。
目標は、中古車売買全体のマーケットシェアの10%
ーカババの市場における成長潜在力について、どの程度の規模を見込んでいますか?
2021年の中古車市場のデータでは、中古車売買のマーケットサイズは4.1兆円と開示されています。
そのうちオークションなどを除く、小売りで売られている車は2,530,000台です。
我々は、中古車市場のマーケットシェアの1割程度を獲得したいと考えています。
私の試算では、安全が担保されてる前提ならば、完全オンラインで車を買いたいという人がユーザーの約30%いますので、その30%のマーケットのうちのシェア30%、したがって全体のマーケティングシェアのうち約10%を獲得できると考えています。
ー事業多角化に関する戦略について詳しく教えていただけますか?
実は、以前にカババに出品する車を集める集客目的で、カーシェア事業をしていました。
カーシェア事業をしたことで、経済合理性を高めたいという確かなニーズがあることがわかりました。
カババの出品者が順調に増えたことと、カババの事業に集中する為に、カーシェア事業は終了させましたが、今後再開する可能性もあると感じています。
2024年4月からのライドシェアサービス解禁なども踏まえ、時代に合わせた内容で再始動させたいと考えていますね。
また、マッチング率が改善したことは先ほど触れましたが、マッチングしない車があることも事実です。
出品した方は「大事にしてきた自分の車が売れなかった」と残念な気持ちになっています。
我々ができる最善策として、マッチングできかった中古車を自社で買取り、高価買取してくれる中古車買取業者に販売するという新サービス「プロに任せる一括査定」を開発しました。
この方法は、自分の力で売るよりもはるかに安全に・高く車を売れます。
また、出品者は何もしなくて良いという利便性の高さも特徴です。
出品者の味方になるプロが間に入ることで、買取業者とのトラブルも未然に防げますよね。
時間の余裕がない方が利用しづらいことがカババの弱点でしたが、プロに任せる一括査定の登場で、時間のない方へのリーチにも繋がっています。
ユーザー評価も非常に高いサービスなので、ゆくゆくは一つの事業とすることも想定しています。
ー最後に、定性的な情報として、実際の感謝の声があれば教えてください。
オンラインのサービスでも間に人がいることで、最後まで安心して取引できたという声がありました。
弊社は取引成立までは査定士が担当し、その後は取引サポートチームがお客様を担当しています。
自分の車が売れる前と売れたあとでしっかり線引きされたオペレーションがある点を評価いただくことが多いです。
また、取引先業者とのやり取りも、誠意を持って対応することを徹底しています。
長くお付き合いできる関係を築けていると思っていますね。