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Can Tho市内における工業区建設―水田が工業区になることの意味を考える

先週は、デルタ、湖など熱帯の水辺に魅せられたフィールドワーカー3人で、Can Tho市内各地のマーケット(chợ)とDong Nai省Tri An湖を訪れました。筆者は普段、大学と家の往復で、調査に行くとき以外はあまり遠出していないので、Can Tho市近郊の様子が分かってとても勉強になりました。今回の投稿では、車窓を見ながら個人的に気になった点を羅列的にまとめていきます。

Can Tho市内の農業的土地利用


Can Thoの中心部からHau Giang側に行くにつれて、辺りは都市から果樹園になります。ジャックフルーツ、ドリアン、マンゴー、ロンガン、ランブータンなどの熱帯果樹園が、高畝に植わっています。
道端でも、おそらく果樹園でとれたフルーツが量り売りされています。いつもバイクで通り過ぎてしまうので、写真はありません。。

果樹園エリアを抜けると、整備された区画に沿って広い水田が現れます。整備された区画の水路にはkinh 1000(1000 水路=kinh)などの名前が付いています。そのエリアでは1000mおきに水路が掘られていることを意味しています。
カントー市の中でも、よりハウ川/バサック川よりの土地は、川の影響を受けた氾濫原なので、水田は、自然河川(ハウ川の支流)をもとにして水路が整備されています。水田は河川や水路の間を埋めるように立地しています。
水田地帯の道路わきでは、女性たちがパラソルを広げて、田んぼでとれたであろう、タウナギやジャンボタニシが売っています。

調査でその水田地帯を通ったときには、イネの鮮やかな緑が青空に映えて、まぶしいくらいでした。
世界トップクラスのコメ輸出量を誇るベトナムのお米はこうやって作られているのだと実感させてくれるような風景です。

工業区建設計画―青田が広がる風景が消えること


そんな風景も、ずっとあり続けるものではなくなってきています。
Can Tho市Vinh Thanh県Vinh Trinh社(xã Vĩnh Trinh, huyện Vĩnh Thạnh, TP. Cần Thơ)では、総面積900haにも上る工業区が建設される計画です。10万人の雇用を生む計算だそうです。投資しているのはシンガポール企業で、ベトナムーシンガポールによる共同での工業団地の建設は、メコンデルタで初です。総投資額は3兆7000億ドン(3700 tỷ vnd = 約220億円)にも上ります。

整地のための砂が不足しているそうです。メコンデルタの河川や水路では浚渫船が砂を吸い上げています。メコン川上流でのダム建設で、土砂の供給量が減っている中で、建設資源としての砂の需要は増えているからです。上流から土砂が来ないのに、浚渫をするので河岸の土壌侵食も進みます。でも、浚渫を生業にしている人々がいて、ただ規制すればいいという話ではありません。(この話は別稿に預けます)

ベトナムーシンガポール工業区について、詳しくは以下の記事も参照。

次の記事では、Can Tho市内の工業区をまとめています。


このエリアを通ったときの、ドライバーさんが言いました。(メコンデルタ弁を関西弁に訳しています。)

「この通りはがらすきやろ。田舎でもカフェはある。でもレストランあっても人は来ん。田舎で農業して現金稼ぐんは大変なんや。子供を学校行かさなあかんくなったら、お金かかるやろ。お金持たせようにもあらへん。ここには工業区ができる予定なんや。ここに工業区ができれば、一つの街ができる。工員たちが住むようになるから、レストランも飲み屋も、下宿もできる。そもそも土地の値段が上がる。やから、お金なくて困っていたら土地売ってらまとまったお金も得られるようになるんや。立ち退きする人には土地と仕事も全部保証するねんで」

ドライバーさんはCan Tho市出身。工業区ができる当該地域出身の方の話は聞けていませんが、同じ市内に暮らす人としては、工業区ができる経済効果を肯定的に捉えているのが印象的でした。

美しい田園風景で続いてきた自然とのかかわり、暮らしの営みは、工業区ができることで全て断ち切られてしまうのか。一緒に調査をしている友人たちも、この景色が失われてしまうことを残念というか、寂しく感じていました。
ただ、それをドライバーさんには言えませんでした。イネの収穫まで、農家がどれだけお金のやりくりに苦労しているか、収穫できても、それまでの借金の返済でほとんど手元にお金が残らないことを、調査地から教えてもらったから。
自然の中で生きることと、経済開発は必ずしも二項対立ではないと考えています。どのようにそのバランスをとるかはケースバイケースで、絶対解はありません。
今後自分は地域とどうかかわっていきたいのか、(研究なのか、より実践的なプロジェクトなのか)、考え中ですが、いずれのポジションでも、地域の人の生活感覚にいつでも敏感でありたいです。


Can Tho市内の水路に沿って並ぶ家屋


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